今日はビーナスフォートの本屋で面白い本を買った。

万葉集から恋の歌を集めて、それに現代語訳を載せたもの。

読んでて小沢健二の「LIFE」のアルバムを思い出した。
まさに「爆発する恋のアムール!」って感じ。恋心がスパークしてる。

たくさん言葉を重ねても、その中にどれだけの真実が隠されてるのか分からない現代と比べて、昔の人はよくこれだけ短い言葉の中に濃い想いを載せたものだ。

無印良品のBGM集を聴きながら、秋の夜長に一人読書。

「前日(をとつい)も 昨日(きのふ)も今日(けふ)も 見つれども
  明日さへ見まく 欲しき君かも」…橘文成(たちばなのあやなり)

一昨日も昨日も今日もあったけど、明日も君に会いたい


「うつたへに まがきの姿 見まく欲り 
  行かむと言へや 君を見に」…大伴家持

君の家の庭が見たいと言ったのは本当は君に会いたかったから


「玉ゆらに 昨日の夕(ゆふべ) 見しものを
  今日の朝(あした)に 恋ふべきものか」…作者不詳

昨晩初めてほんのひととき会っただけの人なのに、夜が明けて目が覚めて、まさか恋に落ちてるなんて


「雷神の 少し響(とよ)みて さし曇り 
   雨も降らぬか 君を留めむ」…作者不詳

雷が鳴って雲が広がり雨が降ってくれたならあなたを引き止められるのに

「雷神の 少し響(とよ)みて 降らずとも
  われは留(とま)らむ 妹し留めば」…作者不詳(返歌)

雷がならなくても雨が降らなくても、あなたが引き止めてくれるなら私はここにいるよ


「ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか
  君を相見む おつる日なしに」…作者不詳

空ゆく雲になれたなら、一日もかかさずあなたに会いにいくのに


「かくばかり 恋ひむものそと 知らませば
  遠くそ見べく あらましものを」…作者不詳

こんなに恋がつらいと知っていたなら、遠くからこそ見ているべきだったものを


「思へども 験(しるし)もなしと 知るものを
  なにかここだく わが恋ひ渡る」…大伴坂上郎女

どんなに想っても報われないと知っているのに、どうしてこんなに恋をし続けているんだろう


「命あらば 逢ふこともあらむ わがゆえに
  はだな思ひそ 命だに経ば」…狭野弟上娘子

生きてさえいればきっとまた会えるから そんなに悩まないで 命さえあればまた会えるから


「わが後に 生まれむ人は わが如く
  恋する道に 逢ひこすなゆめ」…作者不詳

これから生まれてくる人は、私のような恋をしてはいけない


「相見ては 心慰むと 人は言へど
  見て後にぞも 恋まさりける」…作者不詳

逢いさえすれば恋しさは癒されると人は言うけれど、逢えばますます募るあなたへの恋


「朝に日に 見まくり欲りする その玉を
  いかにせばかも 手ゆ離れざらむ」…大伴家持

朝も夜も見つめていたい宝物の君をどうしたらずっと自分のものにしておけるだろうか


「立ちて居て たどきも知らず 我が心 
     天つ空なり 土は踏めども」…作者不詳

君のことを思うと居てもたっても居られない 身体は確かにここにあるのに ただ心だけがあてどなく宙をさまよう


「古に ありけむ人も 我がごとか
  妹に恋ひつつ 寝てかてずけむ」…柿本人麻呂

昔の人も 私のようだったのだろうか 好きな人を想って 寝ることができなかっただろうか


「今のみの 行事(わざ)にはあらず 古の
  人ぞまさりて ねにさへ泣きし」…柿本人麻呂(返歌)

きっと今だけのことじゃない 昔の人はきっと声さえあげて恋に泣いたはず


大伴家持&柿本人麻呂、ロマンチックすぎる。相当モテたらしいけど、確かにこんな感じで口説かれたら一発で落ちるかもしれない…。

しかし恋する人の気持ちはいつの時代も変わらないものだなぁ。
柿本人麻呂は「昔の人はどうだったんだろう」って言ってるけど、昔の人どころか未来の人も全く同じですよと教えてあげたい。


(※以前書いた記事を転載したものです)