新緑の季節になると、毎年贈り物のように届けられる一冊の本がある。

一年中、ほとんど思い出すことはないのに、その季節になるとふっと思い出して、「そろそろかな」と本屋に行くと、片隅にひっそりと積み上げられているのだ。

1ページづつ大切に、そっとめくるたびに、優しさと温かさが胸に満ちていく。
何気ない日常の中に、人間の大きさ、温かさ、かわいらしさがつまっている。そんな当たり前の、だけど大切なことを思い出させてくれる本。

みちはしちかこの「小さな恋のものがたり」。

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あなたをみてると
勇気がわいてくる

ひとりの人を
いっしょうけんめい
想いつづけることの
可愛さに

目頭が熱くなる

わたしもがんばろうと思う

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生まれたばかりのあなたが

なんでこんなになつかしいのだろう?

去年と同じ花が咲いて

なんでこんなに新しいのだろう

あなたは同じあなたなのに

なんで会うたびにどきどきするのだろう

めぐる季節
訪れる朝

くりかえし届けられる
誰かからのふしぎな贈り物

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くつを脱いで
荷物を下ろして
ほっとできるところ

お母さんがいなくても
お母さんのにおいに包まれるところ

「ただいま」と帰ることができるところ
「いってきます」と出かけることができるところ

あたりまえにあって
思えば
かけがえのない
愛おしい「わが家」というところ

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はじめてふたりっきりになったときのこと

覚えているかしら

あなたは

遠い雲ばかりながめていて

わたしは

あしもとのタンポポばかり

みつめていたわ

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あなたと私
 あお空と雲

あなたと私
 風と野の花

あなたと私
 バラと朝露

あなたと私
 光と木の葉

あなたと私
 ふたりでつづる
  小さな恋のものがたり

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