人体の水分は、成人で60%ほどです。

つまり人の身体は結構水っぽいのです。

太極拳で人を打つのに、掌を多用する理由の1つが

そのことと関係しています。

 

固めた拳で物を打つのは、人体を個体と考えて

固いものを打ち壊す、という感じです。

空手などで鍛え上げた人では、瓦をはじめとして

ブロックなども拳で破壊する人がいます。

太極拳では人体は水の詰まった袋くらいに

考えます。

そして、人を打つのに袋を破壊するようには打ちません。

人の身体に水分に衝撃波を与えて、内臓に影響を与えるような

打ち方になります。

太極拳の型稽古や、殴ったり打ったりの単品の練習が

そうした体の使い方を覚えるためのものなっています。

特に掌は拳よりも人体表面から内部に衝撃波を与えるのに

都合がよくできています。

武術の初心者でも、少し練習すれば、頭のある部位を

適切な打ち方をすることで、相手に脳震盪のような

ダメージを与えることが出来るようになります。

 

また、太極拳では自分の身体も、水の詰まった革袋位に考えます。

特に站樁などの練習の時に、熟練してくると、各関節の感覚が

変わってきます。関節に非常に細かい良くできたベアリングが

入っている感じになってきて、さらに進むと、本当に

自分の身体が、水の使った革袋のように感じられてきます。

こうなると、相手との力の衝突が極めて少なくなります。

力を出すときにも身体全体を無理なく協調させられるようになります。

打撃や投げ・固め技の質が変わってきますので、何かと便利になります。

初心者の方でも、うまくいくと、手ほどきが容易に出来るように

なります。

また、大胸筋の厚い胸のあたりを誰か打ってみてください。

筋肉の鎧を貫通して、肺に届く感じがすれば成功です。

具体的には相手が咳き込んだり。とても嫌な気持に

なるのですぐに分かります。

2人で組んで行う練習は、自分の身体操作が適切か否かを

実感できる良い試金石になります。