不気味: /5
やみつき: /5
京極夏彦さんの
「眩談(げんだん)」を読みました。
『便所の神様』
ぼくの家は古くて汚い木造の平屋だった。線香や蝋燭や
樟脳、土、老人の匂いが混じり合い、臭い。恥ずかしい。
お便所は特に強烈な匂いがして、怖い。
『歪み観音』
「曲がってない?」と孝也くんに聞いたが、真っ直ぐだと
言われた。私には電柱が曲がって見えていた。そして、
シャーペンも箸もお風呂のお湯も次々に曲がっていく。
『見世物姥』
敬太は村で六年に一度の祭を楽しみにしていた。
六年前はまだ小学生1年生だったので記憶は曖昧だった。
ふと、同じ学年にいたはずのとよちゃんのことを思い出した。
『もくちゃん』
一緒に登下校していた亀山くんの隣には困った人が住んでいた。
亀山君を「もくちゃあん」と呼びかけながら追いかけてくるのだ。
亀山君はその人のことを「人殺しだ」という。
『シリミズさん』
経済的に行き詰まった私は秩父の実家に戻ることにした。
見殺しにされることはないので気楽なのだが、
家では昔からおかしなことばかり起こるので嫌いだった。
『杜鵑乃湯(ほととぎすのゆ)』
古くて名所もない巨大ホテルに泊まった。湯はいいが、
対応も料理もいまひとつだ。ホテルの中を歩き回っていると
迷子になり、よくわからないものを見てしまう。
『けしに阪』
父の葬儀の日、いた堪れなくなり抜け出した先に坂があった。
そばにいた老婆が忘れていたことを思い出す坂だといった。
登り始めると、幼い頃縁の下で見たもののことを思い出して――。
『むかし塚』
小学生の頃、よしこさんという女の子がいた。ところが
2学期が始まると、よしこさんはいなくなっており、当時の
クラスメイトに聞いても誰もよしこさんをおぼえていなかった。
怪しい8篇の短篇が
収録されています。
京極夏彦さんのまわりくどくて
不気味な言い回しが
心地よいと思うってしまうあたり
中毒気味ですね。
意味不明で気味が悪いです。
特にお気に入りなのが「シリミズさん」ですね。
意味が分からないっぷりが
かなり好みです。
田舎の古い家で起こる不思議な出来事が
怖いというよりは
脈絡がなさすぎて笑えてきます。
昔から家にいるっぽい”何か”に
妙な愛らしさを感じてしまいますよ。
やはり京極夏彦さんいいですね。
全体的に好みでした。
眩談 (幽BOOKS)/メディアファクトリー