「廃工場のティンカー・ベル」いいお話……。 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

廃工場のティンカー・ベル/講談社

前向き:あったか気分あったか気分あったか気分あったか気分 /5
泣ける:かなしいねかなしいね /5


永嶋恵美さんの
「廃工場のティンカー・ベル」を
読みました。


『廃工場のティンカー・ベル』
 建築士の片平は来月下見予定の廃工場を先に見に
 行ってみることにした。そこには一人の少女が隠れていて、
 勝手に身の上話などを始める。

『廃線跡と眠る猫』
 美野里は子どもの頃に近所の人とエサをやっていた猫、
 フタバを思い出していた。そのころは貨物用の線路脇に住んでいた。
 フタバは突然姿を消し、線路が廃線になった今でも気にかかっている。

『廃校ラビリンス』
 拓人は廃校になった小学校にもぐりこむ。家出である。しかし
 あっさりと警備員に見つかってしまった。ところがその警備員が
 ロン毛のにいちゃんといった感じで変な男だったのだ。
 
『廃園に薔薇の花咲く』
 美緒は祥と一緒に閉園になった遊園地に忍び込んだ。親友の祥とは
 中学2年で違うクラスになってしまい、美緒はひどく落ち込んだ。しかし、
 祥の方はいつも通り飄々としていて……。

『廃村の放課後』
 勝巳はかつてゼミの方言研究で訪れた村へ恋人の遼子と
 その息子の聡と立ち寄った。村は廃村になっていたが、
 かつて研究者を目指そうと憧れた気もちが蘇ってくる。

『廃道同窓会』
 高校の山岳部仲間だった香津美が死んだ。中年女性となった
 3人は山に散骨して欲しいという彼女の願いを叶えるため、
 登山を始めたが、若菜が足をくじいてリタイアしてしまった。



かつては人が活動していた場所が
寂れてしまう。

そんな場所で起こった物語の短編集です。

主人公は挫折や心の傷を
抱えていますが、
廃地での出会いをきっかけに
立ち直っていくという
パターンが同じです。

ただ、廃地の種類や
それぞれ抱える事情はいろいろ。

決まった1つのパターンを
アレンジしていく感じが
おもしろいですね。

どのお話も入りやすくて
読みやすいです。

ただ、永嶋さんの「どろぼう猫」シリーズにある
びっくりできる展開は少なくて
ちょっと読後の印象が
残り難いところはありますかね。 

お気に入りは
「廃園に薔薇の花咲く」です。
女の子同士の友情が
いいです。
感動です。