「古道具屋皆塵堂」タイトルの印象よりライトに読めました。 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

古道具屋 皆塵堂/輪渡 颯介

ライト:笑2笑2笑2笑2 /5
好きなテーマ:あったか気分あったか気分あったか気分 /5


輪渡颯介さんの
「古道具屋皆塵堂」を読みました。


『道具屋には向かない男』
 太一郎にはこの世のものではないものが見えてしまうが、その能力を隠し
 つづけて来た。しかし弟の病死により太一郎は家業の道具屋を継ぐことになり、
 修行のためいわつきの古毒具が多い「皆塵堂」の手伝いをすることになってしまう。

『鰻の住み処』
 皆塵堂の主人・伊平次が、指物師・藤五郎の作である掛硯を買い付けてきた。
 よい品であったが、ただ同然の値段だったらしい。その夜、太一郎はその掛硯の
 脇に中年の女性が背中を向けて座っているのを見た。

『鈍刀が切る縁』
 物であふれている皆塵堂の片づけをする太一郎は奇妙な刀を見つけた。そして
 偶然居合わせた武家の男に1両で売ってしまう。ところが、その後連続して
 辻斬りが起こり、太一郎は自分が売った刀に原因があると考える。

『その娘はやめておけ』
 太一郎の幼馴染で棒手振りの巳之助はいつも回っている長屋の娘に
 惚れてしまった。娘に櫛を売りたいと言われた巳之助は太一郎のもとに持って
 いったが、太一郎はその娘が何者なのか気がかりだった。

『猫屋敷に棲むもの』
 太一郎と伊平次、巳之助は向島の廃屋同然の屋敷に仕入れに向かった。
 猫が多く、かつては幽霊屋敷と恐れられていたいわくのある屋敷である。
 しかし太一郎は初めて行くはずの向島の風景に見覚えがあった。



初めての作家さんです。
タイトルとあらすじにひかれて
読んでみました。

江戸を舞台に幽霊が見えちゃう青年・太一郎が
道具屋の皆塵堂のいわく付きの品々に
翻弄される連作短編です。

釣りが趣味で仕事をしない主人の伊平次、
お調子者で酒飲みの幼馴染の巳之助、
商売上手の小ざかしい少年・峰吉、
そんな登場人物たちもおもしろい
ライトな作品でした。
気軽に読めちゃう感じです。

特殊な能力を隠しつつ、
古道具にまつわる怪事件の解決に立ち回る太一郎は
陰のある主人公で、
短編もどことなくしんみりした感じで
幕を閉じるものが多かったです。

しかしふんわりと温かい人情が
隠れているような、
そんな作品でした。

輪渡颯介さん、
何だかいいですね。