「ツナグ」死者と会いたいだろうかと、考えてみました。 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

ツナグ/辻村 深月

考えた:納得納得納得 /5
涙:☆☆☆☆ /5


辻村深月さんの
「ツナグ」を読みました。


『アイドルの心得』
 待ち合わせ場所得にやってきたのは、イマドキの男の子だった。
 平瀬愛美は死んだ人間に会えるという情報を得て、ここまできたが、
 噂の使者(ツナグ)の意外さに戸惑いを隠せなかった。
 
『長男の心得』
 使者があまりに子供だったので畠田は驚いた。死んだ父に
 会わせてもらったと言う母から聞いた電話番号にかけてみたが、信用ならないし、
 本当だとしても、自分よりも先に弟が死んだ母に会っているかもしれない。
 
『親友の心得』
 同じ演劇部だった親友・御園が交通事故で死んだ。御園は嵐を立てるような
 ところがあり、まさか配役で主役を狙って争うことになるとは思わなかった。
 嵐は死んだ御園に会うべく、都市伝説になっている使者へ連絡を取る。

『待ち人の心得』
 病院で出会った老婆に「会いたい人がいるんじゃないですか」と言われ、
 驚いた。土谷には7年前に行方不明になった婚約者がいたのだ。友人は
 女に騙されたというが、土谷は引っ越すことすらできず引きずっていた。

『使者の心得』
 祖母に後継者になって欲しいといわれた歩美。話を聞くと、死んだ人間と
 生きた人間を引き合わせる使者(ツナグ)という仕事だという。
 その仕事の内容にも、祖母が自分を選んだことにも戸惑いをおぼえる。



何とも不思議な
お話です。

死んだ人間と生きた人間が
一度だけ会うことができる。

死んだ人間にとっても一度だけ、
生きた人間にとっても一度だけ。
だから相手に会うかどうかは慎重に選ばないといけなくて、
そこにドラマが生まれるわけでございますね。

そして、その邂逅を仲介するのが
高校生の少年・歩美。

そんな感じの連作小説でした。

心温まる話だけではなくて
結構ビターなのもありました。
モヤモヤしますが、
それはそれで味があります。

さらに最後の短編では
飄々と「仕事」をこなしていた使者(ツナグ)の
少年・歩美の視線で、
ちょっとしたネタばらし的エピソードも……。

この最後の短編には
やられましたね。

前の4編だけでも面白かったのですが、
歩美の立場から見た短編で
オチがついた感じです。

それぞれの死者との対面、
歩美の物語に泣けました。

そして、死者と出会えることって
いいことなのだろうかと
がらにもなく考えちゃったりしましたよ。