「白いひつじ」きたっ、男子寮っ! | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

白いひつじ/長野まゆみ

男子寮:かんどーかんどーかんどー /5

じんわり:☆☆☆☆ /5


長野まゆみさんの「白いひつじ」を

読みました。



幼い頃に海を見に行った記憶があった。

知らない男に連れられて、

少し年上の男の子に手品を見せてもらい、

知らない女性にアプリコットタルトをご馳走になった。


東京の大学へ進学することになった鳥貝は

安い下宿先を探していた。

なかなか見つからなかったが、ギリギリになって

「学友クラブ」で家賃1万円の

格安の男子寮を見つけた。


さっそく面接に応募する。

そして面接場所での目印にと

白いひつじの置物を渡された。



きました。

長野作品で男子寮。


長野作品といえば、男性同士の恋愛を

とてもキレイな風景描写とともに

描き出しちゃったりするものが

多いのです。


「男子寮」と聞いて、

「お、きた!」と思ったのですが、

本作品は恋愛よりも主人公・鳥貝を

影で温かく見守る家族と

その友人たちの優しさ、切なさを

描いています。


謎だらけの鳥貝の生い立ち、

子どもの頃の「海を見た記憶」の正体、

そして得体の知れない寮生たちの発言の真相。


その意味がラストシーンで

じんわりとした感動をもって

明かされちゃったりします。


この作品は好みでした。


長野作品で「男子寮」というネタは

あまりに思わせぶりでしたが、

ラストはいい方へ転んだと思います。


あ、でも恋愛要素もちゃんと

ありましたよ。

やはり男の子同士でしたけれど……。