幻想的: /5
光原百合さんの「扉守」を読みました。
瀬戸の町”潮ノ道”で起こった
不思議な出来事の連作短編集
『帰去来の井戸』
由布は伯母の営む小さな飲み屋「雁木亭」でアルバイトをしていた。
ある日、馴染みの客が引越しをすると聞き、伯母は井戸のふたを
開けるように言った。この井戸の水を飲むと必ず潮ノ道へ帰ってこれるという。
『天の音、地の声』
劇団天音がやってくると聞いて美咲は大喜びした。彼らは変った場所で公演を
行い、その場所にこもった想いを見事な演劇にしてしまう。今回の会場は
子どもたちに「お化け屋敷」と呼ばれている古いお屋敷だった。
『扉守』
学校へ行く前、なぜかなぜかいつもと違う道を使って、
「セルベル」という雑貨屋の前を通った。店主である青年に後で来ると約束し、
登校する。雪乃は自分ではない何かの意思をかすかに感じていた。
『桜絵師』
早紀は子どもの頃に世話になった寺子屋であった持福寺の良斎のもとに
行雲という絵師が訪れているところに出くわす。行雲の描いた桜の絵に
強くひきつけられた早紀は、いつの間にか絵の中へと入ってしまった。
『写想家』
女性のような言葉遣いでしゃべる美景の若者に写真を撮らせれくれと
頼まれた祥江。しかし祥江は結婚した友人から送られてくる愚痴のメールに
心がささくれ立って、それどころではなかった。
『旅の編み人』
友香は渡すことができない手編みマフラーを持て余していた。ある日、電車で
見事な編み棒さばきで編み物をしている女性を見かけた。
しばらくしてその女性が居眠りをしてしまうと、袋から何が飛び出して来た。
『ピアニシモより小さな祈り』
見た目は王子様のようで実はワガママばっかりのピアニスト零と、温厚で有能な
調律師柊のコンビは静音のお気に入りだった。意欲的に演奏会の事務作業に
協力する静音だったが、ある日、家にある鳴らないピアノの話題になり……。
お久し振りの光原作品です。
前回読んだのはファンタジー小説でした。
情景の描写とかキレイだった記憶があります。
尾道をモデルにした架空の町「潮ノ道」で起こる
不思議な出来事のお話でした。
持福寺の住職・良斎など同じ登場人物も
チラホラ出てきます。
やはり町の描写がとってもキレイで、
なぜか懐かしい感じがします。
面白かったです。
ただ「潮ノ道」の住人は不思議なできごとを
すんなりと受け入れてしまうようですが、
こちらはもうちょっとその現実と不思議の
ギャップを埋めて欲しかったなぁと、思わなくも、なくはない、です。
し設定や舞台の美しさは
すばらしい、と思うのですが。
「帰去来の井戸」がお気に入りです。
その井戸の水を飲むと
死んでもその魂が懐かしい「潮ノ道」に
戻ってこれる。
切なくもステキなお話。