「パレード」ホラーじゃないのにお見事な恐怖小説 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

パレード (幻冬舎文庫)/吉田 修一

共同生活描写(前半):☆☆☆ /5

怖い(後半):いるよいるよいるよいるよ /5



吉田修一さんの「パレード」を読みました。

初めての作家さんで、

かなり前に唯さんのブログで拝見しました。



都会の2LDKのマンションの一室で

5人はルームシェアをしていた。


杉本良介は学生(21歳)、

大垣内琴美は無職で恋愛依存気味(23歳)、

相馬未来はイラストレーター(24歳)、

小窪サトルは突然やってきた”夜のオシゴト”勤務(18歳)

伊原直樹は映画配給会社勤務(28歳)


表面上、にぎやかで愉快な日常を送る5人。

しかしその心の奥底で何を感じているのか、

お互いに知ることはできない。



一気読みできた作品でした。

それぞれの登場人物が順番に一人称で

語る5章のストーリーからなってます。


”不気味”とか”後味が悪い”と聞いていたのですが、

前半は共同生活のバタバタ感、

若いメンバーたちのホロ苦な悩みなどが

リアルに描かれていて、
ちょっと笑えちゃうくらいに面白かったです。


しかし徐々に雰囲気が深刻なものになってきて、

最後は噂どおりの後味の悪さです。


前半で面白おかしく思えていた

メンバーの共同生活が一気に不気味なものに

見え始めます。


仕掛けとしてはお見事としかいいようがないのですが、

これは本当に憂鬱になりますね。

しかしグロい描写、お化け、幽霊を使わずに

人間の内面を描くだけで

ここまで怖い、嫌な気分にさせてくれるのも

ある意味すごいと思います。


私もルームシェアをしていたので、

個人的にはかなり感情移入できて

心に突き刺さった作品でもありました。

結構好きです。