ホラー: /5
奇抜な世界観: /5
Mirokuさんのブログで拝見した
曽根圭介さんの「鼻」を読みました。
『暴落』
ヘルパーさんが代わった。彼女はギプスに覆われて
身動きの取れず、何も見ることができない”ぼく”の
過去を知りたいという。
『受難』
金曜日の夜に飲み会があり、すっかり酔っ払った後の
記憶が全くなかった。気付いたら、手錠をはめられビルとビルの
隙間にいた。そしてここには誰も気付かない。
『鼻』
人間には”テング”と”ブタ”の2種類がいる。”テング”は迫害され、
強制的に施設へ送られてしまう。外科医の”私”はとうとう
禁断の”テング”を”ブタ”にする転換手術へと踏み切る。
これはまた斬新すぎるホラーでした。
作品中の世界設定が奇抜なのにも関わらず、
ガッチリ引き込まれます。
個人的には『暴落』が面白かったです。
この話の世界では個人がみんな株式なんです。
株価がすべてで、世間の評価も
結婚、就職なんでも株価次第です。
犯罪を犯したりして株価が暴落し、
上場中止となると
人間燃料にされてしまいます。
だからみんな困った人には
こぞって手を貸したりして、
株価を上げようとするので
一見優しい人ばかりに見えますが……。
ここはやはりホラーですね。
怖い”裏”があるんですよ。
ラストは読めてしまう展開と
いえなくもないのですが
ゾッとしますよ。
短編なのに読み応え十分でした。
表題作『鼻』もよかったです。
これも人間が鼻の見た目で”テング”と”ブタ”がいるという
奇抜な世界です。
刑事の”俺”が随分とヴァイオレントな手段で
行方不明の女児2人を探し続け、
やがて不法な転換手術をする
”私”のストーリーとぶつかります。
”俺”の目線での文章が乱暴で
恐怖をあおります。
『受難』もおもしろい設定です。
ビルの隙間に閉じ込められて飼育されるという展開。
この不条理感、ホラーならではの恐怖を
感じます。
ついでに怖かったのが、
この図書館本に挟まっていた付箋なんです。
このホラー小説を読んで、一体何を
「やらねばならない」と
思ったんでしょうね。
頼むから犯罪がらみだけは勘弁してください。