「サマー・キャンプ」キレイで深い | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

サマー・キャンプ (文春文庫)/長野 まゆみ

キレイな情景:不思議不思議不思議 /5

深い:涙3涙3涙3 /5



長野まゆみさんの「サマー・キャンプ」を読みました。



ひどい女性アレルギィをもって生まれてしまった

温(ハル)は母親や姉とも近付かない暮らしをしていた。

唯一アレルギィ反応が起きない叔母で主治医の

ヒワ子とともに住み、優秀な人間ばかり集まっている学校へ通う。


ある日ルビと名乗る年下の少年から

サマー・キャンプの2週間の間だけ

フィジカルパートナーになってくれないかと

言われる。


女性にしか興味がないヘテロである温は

その申し出を断るつもりだったが……


ルビと暮らすようになり、

人工授精で生を受けた温の出生の秘密が

徐々に明らかになっていく。



相変わらずふわふわとして不思議な

お話でした。


男の子同士の恋愛が当たり前の

長野まゆみさんの世界でしたが、

今回はちょっと趣が違いました。


以前読んだ帚木蓬生さんの「インターセックス 」という

小説を思い出します。

はっきりと男性、女性と分けられない

そんな性別を持った人たちの話です。


本作品も遺伝子上の性別が心の性別と違ったり、

性染色体に異常があったりする一族の物語です。


作品内では性染色体の異常だけではなく、

人の顔を見分けられないという脳の異常を持った人たちが

当然のようにたくさん存在しているようです。


このお話、遺伝子異常を抱える人間たちが

大勢いる近未来が舞台になっているんですね。


やはり長野まゆみさんは情景を描くのが上手いです。


ラストシーンがすごくキレイでした。

物語の核心に触れるので細かく書きませんが、

近未来なのにファンタジーな景色が広がっています。


星間商事株式会社社史編纂室 」を読んで

腐女子的な気分で

手に取った長野さんの作品でしたが、

思った以上に深い内容のお話でした。


いろいろと考えさせられますね。

遺伝子をいじったりして、遺伝子上で「イイ人間」を

つくろうなんてしていると

こんな未来が来ちゃうのかも、ですよね。