美しい: /5
切ない: /5
桜庭一樹さんの「少女七竃と七人の可愛そうな大人」を
読みました。
以前桜庭さんの「青年のための読書クラブ 」を読んだ際に、
ジュードさんから頂いたコメントにタイトルが出ていて、
読みたくなりました。
七竃は異形のごとく美しいかんばせを持っていた。
母親がいんらんだからだと、同じく美しい親友雪風は言った。
七竃の父親は誰とも知れない。
いんらんな母は40歳を前にして未だいんらんで
家に帰って来ない。
祖父と引退した警察犬ビショップ、美しい親友雪風と
旭川の狭い世界で、その美貌のために息苦しい
思いをしながら暮らす。
やがて七竃は雪風に特別な想いを抱いていることに
気付き始めるが……
よかったです。
とりあえず、すごくきれいなんです。
美少年、美少女が登場するからというのも確かに
そうなんですが、その舞台が木々や花、実、
雪など自然のものの色彩がさりげなく美しい。
絵画のような作品なのです。
そして人の会話や行動もどことなく
演劇めいていて、「作品を観賞している」という
気分にさせられます。
そしてそして、とても切ない。
七竃と雪風の叶わぬ想い、七竃の母に対する想い、
なんとも悲しいです。
「七竃」
「雪風」
と、何度も呼び合う声が胸にせまるのです。
(ネタバレ↓)
兄妹と知らずに恋に落ちてしまうという
設定はそのままならとても陳腐に思えますが、
この作品では全くそう感じなかったです。
独特の世界観があって、そちらに目を奪われてしまう
からなんでしょうか。
結構序盤から二人が兄妹である可能性は示唆されている
のですが、「ああ、この展開か」という
うんざりした気分にはならず読み進められました。
これは芸術作品ですね。
おもしろかったです。
ジュードさん、ありがとうございました。