「厭な小説」厭だ、厭だと連発されると | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

厭な小説/京極 夏彦

厭な感じ:☆☆☆ /5

怖さ:ホラーホラーホラー /5



京極夏彦さんの「厭な小説」を読みました。



『厭な子供』

 どうしようもないダメ上司に目を付けられた深谷の「厭だ、厭だ」という

 愚痴を聞かされてから家に帰った高部。すると玄関におかしな子供が

 いた。妻はそれに気付いていないし、いつのまにかどこかへ行ってしまった。


『厭な老人』

 共に暮らしている老人はとても厭な人だった。服や下着は

 とんでもなく汚れたままあちこちに放置する、

 嫌がらせのように庭に排泄する。我慢の限界がきていた。


『厭な扉』

 宿泊すると幸せになるなるというホテルの噂を聞いた。

 事業に失敗し、マルチまがいの商売に手を出し、さらに借金を膨れさせ、

 離婚、逃走。ホームレス状態になった木崎はそのホテルへ向っていた。


『厭な先祖』

 河合は後輩の志村に仏壇を預かってくれと頼まれ半ば

 強引に引き受けさせられる。送られてきた仏壇は何やら耐えがたい

 臭いを放ち、それを置いてある寝室では寝られないほどだった。


『厭な彼女』

 大学の先輩である深谷に郡山は自分の彼女と別れたいのだと相談した。

 彼女とはどうにも意思疎通ができず、いつも何かがズレている。嫌いだと

 言ったはずのグリンピースを山盛りにされたり、熱帯魚を殺したりするのだ。


『厭な家』

 リタイアした殿村はもと部下の深谷に自分の家の話をした。

 どうにも家の様子がおかしいのだ。ひとつひとつはたいしたことではない。

 同じ場所で小指をぶつけ続けたり、干した布団が湿っているように感じたり……


『厭な小説』

 深谷は馬鹿な上司である亀井と出張になり、厭で仕方がなかった。

 数日前に古本屋で買った「厭な小説」という小説を読み始めると、

 驚くべきことに自分の知り合いの話した内容と合致するストーリーだったのだ。



帯の煽り通りなかなか憂鬱にさせてくれる「厭な小説」でした。


馬鹿でどうしようもない上司をもつ深谷なる人物を中心にした

連作短編ともとれますが、各ストーリーはそれほど繋がりがありません。


深谷の知人達がただひたすら「厭な何か」の話をする、

怪談のような奇妙な印象の短編です。


結局は人間の狂気だったというオチが多いのですが、

そこへ至るまでの語り口調だとか事件の起き方が

さすが京極さんです。飽きさせません。


そしてちょっと気持ち悪いのも絶妙に「厭」な感じでした。

グロい、とまでは言いませんが、

生理的に気持ち悪い描写が若干あります。

「厭」さの演出としては許容範囲内ですが。


「厭」という漢字がふんだんに使われていて、

「厭」な暗示にかかりそうです。

さすが言霊師ですね。

鬱になりそう……



装丁も妙に凝っています。

古い本をイメージしたようで紙にもこだわりを感じます。

何だか小学校の頃のプリントに使われていた

わら半紙の質感を思い出してしまいました。


すごく太い割りに軽い。

400ページ越えなのですが、

読むスピードの感触から300ページくらいに感じました。


どうなってるのかしら。