「凶笑面」表紙が怖いけど、トキメキ | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)/北森 鴻

民俗学要素が面白い ワクワクワクワクワクワクワクワクワクワク /5

本格っぽい雰囲気 あったか気分あったか気分あったか気分 /5



バステトさんのブログで拝見し、興味を持ちまして、

北村鴻さんの「凶笑面」を読みました。

それより(かなり)前にふみさんからも

オススメを頂いていました。ありがとうございます。


民俗学を研究する美貌の大学助教授・蓮丈那智と

その助手・内藤三國がフィールドワーク中に血生臭い事件に

巻き込まれる連作短編。


『鬼封会』

 都筑という学生から那智の元に送られてきた祭祀の

 ビデオを見て内藤は驚いた。春休み、その祭祀の詳細を

 確認するために2人は岡山へと出かける。


『凶笑面』

 内藤が書いた論文を読んだ那智は「Bマイナス」と冷徹に

 言い放った。しかし視点は悪くないと言い、不気味に笑った面の

 写真を出す。その「凶笑面」と内藤の論文には深いつながりがあるらしいが。

 

『不帰屋』

 那智の研究ファイルを整理するのに悪戦苦闘していた内藤だったが、

 苦い思い出のある「不帰屋」というファイルを見つけ、思わず開いてしまう。

 それは2年前に起こったとある事件の記録だった。


『双死神』

 「あなたの身に危険が及ぶかもしれない」

 那智に詳細を告げず、単身で調査に出かけた内藤の前に現れた

 《狐》と名乗る女はそう言って姿を消した。


『邪宗仏』

 聖徳太子はイエス・キリストだった、と突拍子も無いことを

 言い出した那智。しかしそれは1ヶ月前に起こった事件が

 示す事実だったのかもしれない。



とても面白かったです。

民俗学と殺人事件が絶妙に絡み合った連作短編集です。


名探偵とその助手という構図が本格ミステリでお馴染み

のスタイルですが、お馴染みであるがゆえに読みやすく、

人物もつかみやすかったです。


毎度、研究対象を追って行った先などで殺人事件に関わってしまう

という展開もお約束。


でも、その民俗学の研究対象、お面とか、蔵とか、仏像とか

そういうものの謎が殺人事件に深く関わっている

においがしてくると、「何だろう、このトキメキは」……

と、なってみたりして。


《税所コレクション》というこれからもずっと関係してきそうな

大きな力の存在がうかがえるものもチラリと見えます。

短編としてだけでなく、全体を通して面白い展開が

期待できそうですね。


香菜里屋シリーズ、未読ですが冬狐堂のシリーズも

少し絡んでいて、ファンならさらに楽しめる内容かもしれません。


こういう本で語られるウンチク系の話、やっぱり

好きです。

民俗学というのは答えがないそうで、

今は定説となっていても真実とは言い切れない。


発掘されたものがニセモノ(そんな事件ありましたね)

と分かったり、調査技術の向上などで簡単に翻ってしまう。

それでも内藤くんや那智先生の説を聞いていると

なぜだかワクワクしてしまいますね。

これがロマン??


ふみさん、バステトさんありがとうございまいした。