ラスト泣きそう: /5
史実アレンジのおもしろさ: /5
嶽本野ばらさんの「デウスの棄て児」を読みました。
益田甚兵衛好次は商談のために美しい自分の妻を
葡萄牙(ポルトガル)の商人に差し出した。
葡萄牙の地で混血児として生まれた四郎は
切支丹として洗礼を受けるが、悪魔の子として迫害され続ける。。
基督教について熱心に学びながらも心の奥深くでは
神デウスを深く恨むようになっていた。
やがて葡萄牙を追い出された四郎は日本に
戻り、神の子として農民一揆の総大将として立ち上がる。
史実を何とも悲しいお話にアレンジしています。
島原の乱の天草四郎時貞は授業でやったときから
その若さやかなりの美男子という噂、謎の多さから
かなり気になる存在でした。
中学の授業でも先生が”騙されたり、のせられたりして一揆の総大将に
されてしまったと思われる”というような持論を披露していましたので、
このお話はかなり私の天草のイメージに合っていました。
そして普通の時代物とはまた一味違う、
嶽本さんらしい作品に感じます。
一揆の戦況よりも、四郎の心を歪ませた
卑怯な大人たちの振る舞いや逆に彼を深く信じる貧しい女たち、
そして忠義を貫く参謀の山田上衛門作とのやり取りが
多く描かれています。
最後は泣きそうなくらい悲しいのですが、
授業で”すっかりみんなに利用されて
死んだ天草”というイメージがついていた私には
救いになるような結末でした。
かなりの脚色があるかと思うのですが(歴史は詳しくありませんが)、
小説としてなかなかおもしろかったです。