ホラー: /5
民俗学的: /5
岩井志麻子さんの「ぼっけえ、きょうてえ」を
読みました。
『ぼっけえ、きょうてえ』
自らの生い立ちや思わずもらした秘密の話の数々を
女郎は寝物語に旦那に聞かせていた。
顔の左側が引き攣れたようになっている彼女の秘密とは。
『密告函』
コレラの流行の中、役場ではコレラ感染の疑惑のある隣人を
匿名で密告できる箱を設置した。箱の中の密告内容を検証する
嫌な係りを引き受けさせられたのは一番若い弘三だった。
『あまぞわい』
ユキは岡山の町中で酌婦だったが、漁師の錦蔵に見初められ、
結婚した。だが、漁師の妻としては何一つ満足に出来ない
ユキに錦蔵はすぐに愛想を尽かした。
『依って件の如し』
幼いシズは兄と2人で村の小屋に暮らしていた。
母親が犯した禁忌により、2人は村八分同然に扱われ、
身を粉にして働いても満足に食べられなかった。
初めて岩井志麻子さんの作品を読みました。
第6回日本ホラー小説大賞受賞作、だそうです。
タイトルの意味が分からなかったのですが、
岡山の言葉で「すごく、こわい」ということらしいです。
表題作では女郎が方言で旦那に語るという一人称で
書かれていて雰囲気がありました。
女郎の生い立ちも壮絶で、怪談特有の
「いや~な予感」が作中に満ちています。
グロい描写もありますが、女郎の語り口調のせいでしょうか、
どことなく上品さすら感じます。
この一人語りの雰囲気かなり好みです。
一人語りといえば、そろそろ稲川淳二 さんの季節ですね。
それはさておき、他の短編も面白かったです。
岡山周辺で民俗学ベースのホラーな話でした。
明治時代あたりの話で、飢餓があったり、病気があったり、
付議密通、近親相姦、掟破りなどの禁忌が
テーマになっています。
ただちょっと表題作以外は回りくどいような気がしました。
長く感じて読むのに時間がかかります。
しかし他の岩井さんの作品も読んでみたくなる作品でした。
もしかして全部ホラーなんでしょうか。
夏だからいいですが……