「蘭陽きらら舞」シリーズ4作目、未読でも楽しめた | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

蘭陽きらら舞/高橋 克彦

好き:あったか気分あったか気分あったか気分あったか気分 /5

登場人物の魅力:GOODGOODGOODGOOD /5

あっさり:AAA /5



高橋克彦さんの「蘭陽きらら舞」を読みました。

「だましゑシリーズ」4作目。



誰よりも高くトンボを切るのが得意な

美貌の元女形・蘭陽と駆け出しの絵師・春朗(後の葛飾北斎)が

つるんで、様々な事件に首を突っ込んだり、

巻き込まれたり……


『きらら舞』

 勝俵蔵(後の鶴屋南北)にもう一度舞台にたたないか

 と、誘われた蘭陽


『はぎ格子』

 蘭陽は春朗にとっておきの儲け話を持ってきた。

 それには必要な証文があって……


『化物屋敷』

 夏舞台のためになぜか化け物屋敷に化け物退治へ

 向かうハメになった蘭陽と春朗


『出での湯の怪』

 蘭陽は舞台のために人に会いに船掘村へ行くことになった。

 出で湯気分で春朗と左門たちも同行する。


『西瓜小僧』

 蘭陽は西瓜畑で子どもにコケにされ、頭にきていた。

 半鐘を鳴らすいたずらをしていた子どもはまさにその子であった。


『連れトンボ』

 芳吉は夜中に苦しみ出した蘭陽を助けようと

 春朗のところへ転がり込む。


『たたり』

 立て続けによくないことが起こり、夏舞台の内容が縁起が

 悪いためじゃないかと中止の危機に晒される。


『つばめ』

 蘭陽のトンボ切りが命であった夏舞台が人気役者に横取り

 されそうになる。蘭陽はショックでベロベロになるまで酔っ払った。


『隠れ唄』

 少女が歌う唐の手毬唄を聴いた蘭陽は不意に気を失った。

 そこから初恋の人との記憶が失われていたことに気付く。


『さかだち幽霊』

 寺にある幽霊画を見に行った春朗と蘭陽。その中に

 なんとも不気味なさかだちしている幽霊の絵があった。

 

『追い込み』

 夜半、不意に切り付けられた蘭陽、何とか活路を見出したとき

 そこへ助けようと飛び込んできたのは春朗だった。


『こうもり』

 初恋の人おりんの行方を執拗に気にする蘭陽、

 ところがある事件からそれが明らかに……



とても好みのお話でした。

連作短編で、全体を通して蘭陽という人物の過去などが

明らかになっていく構造です。


シリーズ4作目ということで、始めは登場人物が全然判別できず、

どうしようかと思いました。


2編目からは主要人物ぐらいはわかるようになってきて、

スピーディーに楽しく読むことができました。


短編のひとつひとつが驚くほどあっさりしています。

ちょっと物足りないかな、でもそのおかげで読みやすいな、

という微妙なライン、かもしれません。


そして登場人物がとても魅力的なんです。

人情味が溢れています……


蘭陽は女形らしくオネエ言葉なのにやたらと強くてカッコイイ、

でもよく泣いています。

春朗も何だかんだと世話焼きで思慮深い、いいコンビです。


探偵役としてたびたび出てくるおこうさんも控え目なのに、

いわゆる「日常の謎」にめっぽう強そうでいい味が出てます。


これは是非とも最初から読みたい。

高橋さんはこんな作品も書かれているんですね。


帯にはどこから読んでも楽しめるシリーズと

ありますが、多分ここから読んだら登場人物を把握するまでが

ちょっと大変……