「猛スピードで母は」ちょいワル女 | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

猛スピードで母は/長嶋 有

ハードボイルドな女たち:え?え?え?え? /5

子どもはいい子:あったか気分あったか気分あったか気分 /5

かっこいい:ワクワクワクワク /5


昔書店に平積みされていた頃気になっていた

長嶋有さんの「猛スピードで母は」を読みました。



『サイドカーに犬』

 数年ぶりに弟に会う。

 そのとき店でムギチョコを見つけて買った。 

 ムギチョコは私に小学生の頃のことを思い出させる。

 夏休みの初めに母親は家を出ていって、

 知らない女の人「洋子さん」と過ごした日々……


『猛スピードで母は』

 結婚に失敗した母は実家のある北海道の街に

 慎と暮らした。

 ワーゲンが大好きなのに買わない母、

 実家に帰るとき猛スピードで他の車を追い越す母、

 慎と母のちょっと変わった毎日。



何となく表紙の印象からものすごい図々しいオバサン母が

ドタバタするようなコメディタッチの物語を想像していました。


全然違いました。

2話収録で2話とも、子どもの視点からちょっと豪快な女性を

見上げる感じで描かれいます。


『サイドカーに犬』では母親が家出してから現れた父親の愛人だと

思われる「洋子さん」と小学生の私の話。


洋子さんがとても奔放でカッコイイ女性みたいに描かれています。

今まで母親に「アレはダメ」「これはダメ」と言われて育った

私に洋子さんのいい加減さがとても眩しく見えます。

愛人かと思われるのですが、明確な表記はなく

いやらしい感じは全然しませんでした。


表題作の『猛スピードで母は』も雰囲気は同じでした。

こちらは奔放な母親を持つちょっと優柔不断な小学生の慎の

物語。

とても親とは思えないような行動派の女性なんですが、

なぜかカッコイイんですよ、母。

うじうじしちゃう慎との対比が面白いです。


どちらもこれといって大事件のない日々の話でしたが、

面白かったです。


いい加減な女たちを見ている子どもがいい子過ぎて

かわいいし、でも女たちもなかなかかっこいい。

なかなか魅力的な作品でした。