「白昼堂々」いつもキレイな雨が降ってます | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

白昼堂々 (集英社文庫)/長野 まゆみ

季節の描写:あったか気分あったか気分あったか気分あったか気分 /5

人間関係が複雑:あーあーきゅん☆ /5



バステトさんからオススメ頂きました、

雨の描写が美しい凛一くんのシリーズ第一作目

「白昼堂々」を読みました。



中学三年生の凛一は病気で高等部への進級試験を

受けることが出来なかった。


華道の家元の跡継ぎである凛一が進級できないという

のは由々しき事と判断した家元の祖母は

凛一の従姉・省子を身代わりとして追試を受けさせてしまう。


長い髪をばっさりと切って凛一になりすまし

首尾よく追試をこなした省子が代わりに

凛一にふっかけた条件は省子になりすまして

退屈な美術館の監視をこなすことだった。

しかし凛一は省子の男友達に省子だと思い込まれて

連れ出されてしまう。



本当にキレイでした。

華道の家元の跡継ぎ・凛一の親戚関係の

登場人物が多いです。

何だか優美……


華道師範の凛一の目線で季節の花が描写され、

彼が花を活けている様子もとても美しい。


バステトさんがおっしゃるとおり重要な場面では

雨が降っていることが多いのですが、

その表現も様々で印象的です。

驟雨、小雨、台風、梅雨……

雨にもいろいろあるということを思い出させてくれます。


そしてシリーズ第一作目からたくさん人が出てきて

恋愛関係もちょっとごちゃっとしています。


凛一を取り巻く人々、特に親戚関係の人々には

それぞれ傷心な過去があったり、複雑に絡み合う

想いを抱いていたり……


シンプルに考えれば凛一と氷川の恋愛話になると

予想はできますが、周りの人々の気持ちがどう

動いていくのか、2人の関係にどう影響を及ぼすのかが

気になってくるところです。


たいていの人間にとって、恋愛の対象は異性にかぎるって常識は

揺るがしがたい信仰なんだよ。(略)


世の中に精神として通っているものの大半は、たんなる情緒なんだぜ。

相手の態度しだいで揺らぐものを精神とは云わない。(略)


だから精神には目を瞑って、てっとりばやく躰の思うままに生きる。

俺はそういうやりかたを推奨するね。  (本文抜粋)


……というわけですので、恋愛関係も一筋縄では

いかなさそうなのです。


この言葉、とても長野さんの作品の根底にあるもののひとつを表して

いるようで印象に残りました。