「よろづ春夏冬中(あきないちゅう)」幻想的なお話達 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

よろづ春夏冬(あきない)中 (文春文庫)/長野 まゆみ
すごく久しぶりです。長野まゆみさん。
表紙がかわいいので「よろづ春夏冬中」を読みました。
少年達の恋愛を描いた不思議な短編集。
『希いはひとつ』
 下宿探しに行きづまった入谷が引っ越したのはワケあり物件。
 しばらくは何事もなかったのだがある日突然学生風の男が段ボール箱を
 持って訪れた。「これ、きみのだろう」

『タビノソラ』
 鳥越のアパートにいかにも不慣れな常備薬の訪問販売員がやってきた。
 説明はくどくどしくてうっとうしいので、適当に契約をかわした。
 その訪問販売員は『タビノソラ』という酔い止め薬の試供品を置いていった。

『最低の一日』
 通学の電車の中で男子生徒が化粧をする。意図的に仕組まれた
 目撃情報の伝達の研究のため不本意にも電車内で化粧をさせられる安藤。
 電車を降りたところで見知らぬ男に「この莫迦野郎」と罵られる。
 
『海辺の休日』
 テストの答案用紙に講師への質問を書いて出した。
 「独身ですか。もしそうだとしたら、現在つきあっている人はいますか」
 テスト結果はマイナス10点だった。

『飛ぶ男』
 ユキムラは「飛ぶ男がいるなあ」と思ったのである。
 ユキモラは男の後を追って同じ電車に乗る。ずいぶん若くて、
 学生のように見えた。

『待ちきれない』
 部員1人の自然研究部に属している湯村は卒業旅行も講師の小栗と
 昆虫採集だ。生徒から軽んじられるタイプの小栗はドングリ(鈍栗)と
 あだ名され、ゴキブリなどの昆虫を飼育している奇人である。

『花の下にて』
 兄が戻らなくなって4年、中浜は当時の兄の歳に追いついていた。
 会社の新人として花見の場所取りをさせられている。

『アパートの鍵』
 卒業制作のための資金10万円で絵を買ってしまった安村。
 絵の中のアパートの扉の色は表情が豊かな白で住所や水道局のプレートも
 書き込まれていた。

『雨過天青』
 「代筆人求ム」の広告に目を通し電話をした柴田、書道の腕には覚えがある。
 さっそく面接として試し書きをした。師であった祖父の好きな言葉
 「雨過天青」と書きつけた。

『ウリバタケ』
 東雲の誘いで朝顔市へ出かけて夕顔を買った芳井。
 ところがその日から妙に食欲が旺盛になってしまう。

『獅子座生まれ』
 20歳の誕生日を迎えるにあたり、芳井は次に付き合うなら自分から声をかけた
 相手にすると決断した。
 ところが和泉屋のショートケーキが食べたいと東京へやって来た
 少年に付きまとわれる。

『雨師』
 市村が改札口で傘を開くとそれは自分のものではなかった。
 玉先の糸がほつれ、布がめくれあがっている。
 しかし雨がひどいのでひとまずそれを借りることにした。

『空耳』
 鷹田はあまり親しみたくない人格の高野と同じロッカーを使う
 ハメになっていた。理系と文系で分かれている為授業では
 ほとんど顔を合わせないが、書道の授業と昼食は何故か一緒だった。

『猫にご飯』
 食卓が味気ないので風情のある飯茶碗が欲しいと思っていた。
 真鍋は子どもの頃にいつも独りで食事をしていたので、
 隣家の賑やかな食卓をうらやましく思っていた。

実は苦手作家さんだったりします、長野まゆみさん(^^;)

読んでいたのはすごく昔だったのですが、薦められたどれを読んでも

あまり好きになれなかったんです。

表現が幻想的でそのふんわり感だけは結構好きだったんですが……


ただ表紙とタイトルはキレイだったりかわいかったりして

いつも気になってました。

今回も表紙の猫に惹かれて読みました(^^)


この度リベンジですが、私も大人になったのかそれとも

たまたまなのか意気込んだ割りには普通に読めました☆


何が苦手って、出てくる少年や男たちのとある趣向が一貫していて

おなかがいっぱいになるんですよ(笑)

君もか? お前もそうなのか? あんたもかい?!

という具合で……


少年漫画でプロポーション抜群の美少女ばっかり

出てきてうんざりする感覚に近いような……


でもですね、今回はその世界も結構すんなり入れた気がします。

ひとえに連日の準備体操故でしょうか。   

                準備体操はコチラ→「バッテリーⅡ」「月魚」


短編中のお気に入りの話もありました。

『希いはひとつ』と『空耳』です。


『希いはひとつ』は最後で結構びっくりしました。

よくあるパターンなのにやられちゃった感じです。

箱に閉じ込めた神様が一つだけ願いをかなえてくれるという話も

かわいらしかった。ちょっと切ない最後でしたが、

結構好きです。


『空耳』はモロに恋愛モノという感じですが、何だか微笑ましくて

好きかもです。押して、押して、引くって恋愛の常套手段ですね。


思い返してみると結構楽しく読めたような……

苦手意識ってやっぱり増長していってしまうものかもしれませんね。