坂東真砂子さんの「蟲」、
いかにも怖そうで(旧字体で蟲というのがまた……)
興味をそそられて読みました。
純一は造園会社でバリバリ働く
普通のサラリーマンだった。
ある日仕事で訪れた富士川のほとりで
不思議な石の器を拾う。
一方、妊娠を期に退職し専業主婦となった
めぐみは純一の様子に異変を感じる。
すべては啓蟄の日(ムシが起き出す日らしい)
彼が持って帰ってきた石の器がやって来てからだ。
器を置いた電化製品が次々に壊れていく、
一癖あった純一が妙に優しいだけの男になった。
そしてとうとうめぐみは純一の体から
巨大な蟲が這い出しているのを見てしまう。
中盤まではものすごく引き込まれました。
何かが起こっている気味の悪さが端々にあって、
怖いのが来るぞ、来るぞ、という期待感が(笑)
しかし終盤、特に予想外のことも起こらず(^^;)
ちょっと肩透かしをくらった印象でした。
結局蟲は何だったのか、
分かったようなうやむやになったような。
不気味と言えば不気味な最後でしたが、
ホラーを読んだ後の気分としてはいまいちでした。
「蟲送り」という昔の風習が出てきましたが、
本当にやっていたのかな。
この行事にはちょっと興味を持ちました。
こういう昔の風習をホラーの小道具に使うと
怖さが増しますね。
虫というテーマも何となく人の生理的な嫌悪感を
そそってくれます。
それだけにちょっと残念さを残した話でした。
貴志悠介さんの「天使の囀り」を思い出した。
虫、というか寄生虫への嫌悪感を
最大限に呼び起こしてくれた
いい意味でトラウマな小説です。
怖くなりたい方にオススメです(笑)