「新世界より」は切ない | 本の話がメインのつもり

本の話がメインのつもり

気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。


新世界より上・下 /貴志 祐介
    



今日一日コレを読んでいました。

貴志裕介さんの「新世界より」
です。

これは現在よりずっと未来を舞台に

主人公の渡辺早季という女性がさらに未来の人類へ向けて

手記を綴るという形式で語られています。


未来といってもSF映画のような雰囲気ではなく

むしろ田園的な、夕方には公民館から

「遠き山に日は落ちて」

というドヴォルザークの「新世界より」が流れてきて

子ども達がお家に帰るような小さな町が舞台なのです。


そこで発達しているのは科学技術などではなく

呪力と呼ばれる今なら「超能力」のような力で、

まだ呪力のない子ども達は徹底的に管理されています。


少女だった早季もそんな子どもの一人でしたが、

人類の存在を問うような様々な出来事が彼女に

降りかかり、成長していく過程で物語が展開していきます。

架空の生物バケネズミやミノシロのような不思議な生き物たちも

登場して物語は異世界のような雰囲気です。


切ないエピソードが多いですが

早季の淡々とした語り口で語られているので泣かされは

しませんでした。

でも上巻の最後から下巻の初めのくだりは切なくてやりきれないです。


独特のホラー小説風味の薄気味悪いような雰囲気もあって

読んでる間何回もドキドキして溜息が連発でした。

主人公の早季の一人称であるためなのか、

主人公よりも周りの人間がなかなか魅力的です。

何回も

「死なないでー」

と念じながら読み進めましたが、結構……

ネタばれになるので言いません。


いろいろと「何で?」と突っ込みたくなる

要素もありましたが、そんなことどうでもよくなるくらい

入り込んで読めました。

一日かかっても読んでよかった。