娘が離婚を決意するまでには、大変な覚悟が要ったと思います。
けれど実を言うと、私にも同じくらいの覚悟が必要でした。
当時、私は60歳。
そろそろ仕事を引退して、静かに隠居生活に入ろうかと考えていた頃でした。
けれど、娘と孫、二人を連れて家を出てきたことで、話は変わりました。
これから二人を養っていく立場に、私自身がなったのです。
正直、迷いがなかったと言えば嘘になります。
それでも、幸いだったのは、私の仕事に定年がなかったこと。
体さえ動けば、いつまでも働ける仕事でした。
「隠居どころか、まだまだ働かなければ」
そう腹をくくったとき、不安よりも、なぜか力が湧いてきたのを覚えています。
もうひとつ、どうしても譲れないことがありました。
孫の幼稚園です。
来年の入園手続きは、すでに済ませてありました。
その幼稚園は、娘が事前にあれこれ調べ尽くして、「ここだ」と決めた場所でした。
モラハラの夫は、何も考えず、口も出さなかった。
だからこそ、そこは娘が自分の意思で選んだ、数少ない場所だったのです。
「なんとしても、ここに通わせてやりたい」
それは、孫のためだけではなく、娘が自分の力で選び取ったものを守りたい、という気持ちでもありました。
自分の老後の計画が崩れたことよりも、二人の暮らしと、娘が選んだこの場所を守ることの方が、私にとってはずっと大きなことでした。