直接顔を合わせて話すことは、もうできませんでした。
娘は元夫の声を聞くだけで震えてしまいますし、私が間に入ったところで、元夫は「娘本人の口から聞きたい」の一点張りです。
それなら、と娘が選んだのは、手紙でした。
言葉を交わせないなら、書いて伝えよう。
震える手で、娘は一枚の手紙を書きました。
そしてその手紙は、元夫が家にいない時間を狙って、そっと置きに行くことにしました。
私が付き添い、娘の代わりに動きました。
ちょうどそのタイミングは、給料が振り込まれた直後でもありました。
まだ離婚は成立していませんでしたが、夫婦の財産は半分に分ける権利があると、私はネットで調べて知っていました。
だから手紙と一緒に、通帳から半分のお金を置いてくることにしたのです。
今振り返っても、あのとき通帳と現金を持って家を出ていたことは、正解だったと思います。
これから離婚をしようとしている相手に、わざわざお金を届けに来てくれる人などいません。
それどころか、生活費を盾に「戻っておいで」と言われても、おかしくない状況でした。
新しい生活を始めるには、当たり前ですが、お金が要ります。
家を出るときに現金と通帳を持って出たこと。
それは、後になって私たちの生活を守る、小さくて大きな備えになりました。
そしてもう一つ、忘れてはいけないものがあります。
健康保険証です。
孫はまだ小さく、いつ熱を出すか、いつ病院に駆け込むことになるかわかりません。
保険証がなければ、それだけで余計な不安や出費を抱えることになります。
もし今、同じような状況にいる方がいたら。
逃げると決めたときは、通帳と現金、そして健康保険証を必ず持って出てください。
それだけで、その後の選択肢が大きく変わります。
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*(次回につづく)*