1人旅最終日の今日は、夕方には札幌にいなければいけない事情があった。少しでも観光をするには一刻も早く出発する必要があったので、6時半に起床。そして風呂に入る。
露天風呂に行くと、北海道の涼しい秋風がとても気持ち良い。気を抜くとこのまま二度寝をしかねない。
足早に上がり、足早に朝食を食べ、起床から1時間後には出発。知床五湖を歩くためだ。
8:10からその日最初のレクチャーが行われる。知床五湖は夏の間ヒグマの気性が荒いシーズンにつき、ガイド付きでしか入ることができないが、9月からは10分間隔で行われているレクチャーを受ければ、自己探索が可能らしい。昨日知った。
連休もありレクチャーが超満員。8:10からの回には入れず、8:30のレクチャーを受け、1週コースタイム90分の大ループ散策に出かけた。


遊歩道を進むと、世界自然遺産の手付かずの森が迎えてくれる。小鳥が囀る原生林は、野生動物の気配が近い。「動物の世界に来たんだ」という実感を抱かせてくれる場所は貴重だ。
歩みを進めると、湖が現れる。
静けさの湖を見ていると稀に水鳥が羽ばたき、波紋状に水面が揺れ動く。生き物たちの一挙手一投足が五感で感じられる。

対岸にいるであろう他の観光客の会話もよく聞こえた。静けさの森の中に、同族の発する音を聞くとどこか安心するのは人間の中にある動物の本能だろうか。
深い自然の中に来ると、本能が研ぎ澄まされ、自分も動物であるという自覚が湧く。私はこの感覚がとても好きなのだ。その感覚には「恐怖」も含まれる。
自然を相手に仕事をする身として、自然への畏怖はいつ何時でも忘れてはならない。便利になりすぎた普段の暮らし。自然は本来美しくも恐ろしいものであるという感覚が薄れ、簡単に油断が生じる。そして自然は油断を見せた瞬間に牙を剥き、容赦なく命を奪うのだ。
だからこうして時々手付かずの自然の中に身を置き、身震いするような恐怖感を身体に染み込ませる。これが私が自然に向かう一つの哲学だ。
原生林の中を歩く大ループコースは途中から電気柵が張り巡らされて野生動物の入って来られないエリアと合流する。そこから明らかに空気が変わる。文明の利器によって守られた場所。そこにたどり着いた人たちは皆どことなく安堵の表情を浮かべていた。

コースタイム90分のところを70分で回った。次はもう少し時間に余裕を持って行こう。1日での知床→札幌移動はかなり無茶だった。
余韻もそこそこに知床五湖フィールドセンターを発つ。網走刑務所に寄っていきたかったがどう考えても時間が許さなかったので、直接札幌に向かった。セットしたナビの表示は目的地まで424km所要時間7時間20分。最後に北海道を感じた。
レンタカー返却とその後の予定に間に合うよう、途中休憩もそこそこにほぼノンストップで運転した。10時半ごろ出発したはずなのに、札幌に着く頃には溜まっていた2ヶ月分の芸人のラジオを聞き終え、あたりはすっかり夕暮れになっていた。さすがに札幌へ帰ってきた時は疲れ果てていた。
今回の1人旅。かなりのハードスケジュールだったが、食べたいものを食べ、行きたいところに行き、軽いハプニングもあり、想定外の観光もできた。一人旅の良いところ全部載せといった感じだった。
しかし、ばんえい競馬や知床クルーズ、網走監獄見学などやり残したことはたくさんある。
旅は禍根を残した方が良い。また来る理由になるからだ。要所要所で妻や友人の顔が思い浮かぶ。一緒に来たかったなぁと。自分周りの環境に感謝できるのも一人旅のいいところだ。
残してきた未練を回収すべく、また北海道の地を訪れたい。
ここまで読んでくれた方ありがとうございました。