『人はなぜドンデン返しを好むのだろうか?』

 

最近観た映画や読んだ本で特に面白かったものをご紹介したい。

いずれにも共通するのは「ドンデン返し」である。

 

「カササギ殺人事件」

昨年から話題になっている本格ミステリー小説。ネットでも書評でも大絶賛だったので半信半疑で読んでみたが確かに面白い。文庫本上下で計700ページの大作。久々に読書で徹夜をしてしまった。構成といい時代背景、登場人物の描写といい、そしてなんと言っても大胆なトリックはアガサクリスティを彷彿させる傑作だ。

 

「カメラを止めるな」

これも日本で話題になったのでご存知の方も多いであろう。いかにも「低予算」で作られた映画のようにみえるがとんでもない。ストーリーを書くとネタバレになるのでやめておこう。テーマは「家族愛」だ。娘を持っているお父さんには是非とも観てほしい。

 

「サーチ」

若きインド人監督の快作。Netflixで鑑賞。まさに現代のネット社会を見事に投影した映画。アメリカに住む韓国系家族の波乱万丈な物語。映画の中盤以降、思いもよらぬ方向にストーリーは転じて最後の最後まで手に汗握るテンポの良い展開。それにしても最後は本当に「ホッ」とした。

 

「未必のマクベス」

数学をモチーフとして香港を舞台にしたサスペンス小説。いやミステリーでありながら青春小説、恋愛小説、企業小説のようでもあり、ひとつのジャンルに収めるには難しいいろんなエッセンスが詰まった小説。みずみずしい文章がいつまでも印象に残る。

 

「ブラックリスト」

日バスのとあるメンバーに薦められて現在Netflixで鑑賞中。全米でヒット中のサスペンスドラマ。いま日本ではシーズン6が放映されていて、すでにシーズン7も決定したとか。

このドラマはドンデン返しというよりは「ありえない展開」の連続。私は目下シーズン4の半ばまでキャッチアップした。あまりにもストーリーや人間関係が混み入りすぎて訳が分からなくなってきた(笑)。でも、毎回どのエピソードにもこれほど引き込まれてしまうのは秀逸な脚本のおかげであろう。

 

私は日ごろから、人生はできるだけ波風立たずに穏やかに平穏に過ぎていって欲しいと思うタイプの小市民なので、逆に非日常的な想像力や妄想の世界ではできるだけ波乱万丈な経験(疑似体験)をすることが、現実での精神的な均衡を保つためにとても大事ではないかと思っている。

 

つまり、私にとって架空の世界でドンデン返しに遭遇する、ということは「平凡な人生」に潤いを与えてくれる清涼剤としてなくてはならない存在であり、その代わり、現実の世界ではくれぐれもドンデン返しに出くわさないことを切に願うのだ。