日本のCセグハッチはいつのまにか「素うどんハッチ」の宝庫になっていた
自粛期間がもうじき明けるかもしれないというところまできた。自分なりに新しくチャレンジすることを見つけて前向きに日々を過ごしてきたつもりだが、ブログの更新というところまではエネルギーを使えなかった。その本当の理由はいつか語ることになるだろうが、それでもこの活動を続けるモチベーションが落ち込んだわけではない。そんな前置きから今日はどんな話をしたいのかというと、こちらの3台。和製CセグハッチであるToyota Corolla Sport, Honda Civic Hatchback, Mazda3 Fastbackの3台である。考えてみると、この3台はいずれも一時期は時代の寵児としてもてはやされたクルマの末裔だ。Mazda3こそ名前が変わってしまったが、祖先は1980年台に一世風靡したファミリアである。この3台。私が思うにいま日本で買える「良質な素うどん」のようなクルマだと思うのである。うちたてのコシのある麺といりこと昆布が効いた出汁。ネギと生姜を添えればシンプルなのに箸が止まらない絶品のグルメとなる。装備や価格帯を考えると素うどんというには少し豪華な3台だが、それでも素うどんという言葉を使いたいと思うのは「3台とも麺のコシと出汁の風味」といううどんの基本、つまりクルマの基本がしっかりしていると感じたからだ。ここで最初に私がテストした車両のグレードをご紹介しよう。 Corolla Sport : G Z Civic Hatchback: - (1グレードのため) Mazda 3: X Burgundy Selectionの全て”6MT”である。どのグレードももちろん2ペダルのCVTやATが設定されているが、この3台を並べて比較したかったのはそんなトランスミッションにとっては素の状態とも言えるマニュアル仕様が用意されていたからだ。本来ならマニュアル比率の高いヨーロッパ車の方がこの手のクルマが豊富に用意されててもいいと思うのだが、ハッチバックのマニュアル車は日本への導入もどんどん絞られてきてしまった。あったとしてもスポーツモデルのマニュアルくらいで、この3台のようなベーシックなエンジンとの組み合わせはほとんどないと言っていい。しかし、エンジンのパワーを存分に引き出せるという点において「少し控えめなパワーとマニュアルミッション」という組み合わせは無敵と言っていい。ギアチェンジをこまめにしながらキビキビとクルマを走らせる行為は、道路が混み合っていたとしても運転を楽しめるからだ。しかも、この3台が嬉しいのが最新のテクノロジーによる運転負荷軽減の恩恵にも預かれる。というのも30km/h以上からは追従クルコンが使えるし、パーキングブレーキは電動でホールド機能もつく。渋滞時のアシストはマニュアルの性質上できないけれど、ふだんのスタート・ストップでは両足をしっかり休ませることもできるのだ。Bセグメントがコストの関係で電動パーキングブレーキの普及に時間がかかることを考えると、これもCセグメントだからこそできた装備と言えるかもしれない。ハード的には最新のシャシーやテクノロジーを投入して輸入車のCセグメントユーザーも取り込める内容となっている3台だが、実際の味付けは3車3様である。まず、Corolla Sportのフィールは最新のトヨタ車らしい「爽やかな汗がかける1台」と言える。以前お伝えしたCVTモデルのインプレッションでも、このクルマの素性の高さはお伝えしたと思う。ただ、その時に私はCVTならではのラバーバンドフィールがこのクルマの良さを大きくスポイルしているとお伝えした。そして、改めて日を置いてマニュアル車を運転して思うのは、ダイレクト感のあるミッションの大切さとそれによって浮き彫りになった別のネガだった。CVTのベルトから解放されたことで踏みはじめからのレスポンスが良くなった1.2Lターボエンジン。かつてのトヨタ車を思えば劇的に改善したシフトフィールを持つ6MT。「これは悪くない!」と思ったものの、折り返し地点のコーナーでのステアリングフィールが全体の印象と釣り合わない。往年のトヨタ車とまでは言わないまでも、クルマ全体のフィールを考えるともう少し洗練されたフィールが欲しいと思ってしまった。強いていうと、エンジンのトルク感が少し希薄なことも気になる。その点、Civic Hatchbackは「往年のいいホンダ車を彷彿とさせる濃厚なドライブフィール」が特徴。エンジンは同じターボながら排気量は1.5L。踏みはじめからのトルクのピックアップも鋭く、ターボながらも上まできっちり回るところはいかにも「宗一郎イズム」を感じる。その爽快なフィールはシフトや脚まわりも同様。シフトフィールもショートストローク至上主義から解放されてプラスチッキーなフィールがなくなり、エンジンスペックの割にファットなタイヤだと思うものの乗り心地も悪くない。そんな好印象の最大の要因はtype Rを前提に開発されたボディがあるからなのだろう。骨太なカラダをしなやかな筋肉で動かす心地よさがある。そして3台目のMazda3。これは「デザイン, ドライブフィールに貫かれる最新のMazda哲学が随所に感じられる1台」だと思う。デビュー直後にFastbackの2.0L ガソリン, Sedanの1.8L ディーゼルは試乗済だったので、SKY-Xエンジン搭載車のフィールもだいたい想像できた。エンスーを狂喜乱舞させるような濃厚な乗り味ではないけれど、軽快なドライブフィールの中にも質感の高いフィードバックがある。このあたりの気持ちよさはMazda 6などの上級モデルでは感じられなかったものだ。そこにSKY-XとMTが組み合わさるとどうなるか。素性を知らないドライバーが乗ったら、「なんだか気持ちいい」という感想が真っ先に出てくるのではないだろうか。つまり、このエンジンのスペックの凄さをドヤ顔でアピールされている感じがないのだ。メーターの表示を切り替えれば圧縮着火の”SPCCI”が常用域のかなりの範囲で活用されていることが検知できる。でも、そこに留めて燃費を伸ばそう…という気には一度もならなかった。高圧縮ということは当然私が大好きな高回転まで回すことを苦手としているはずなのだが、上で詰まってしまうような印象がない。厳密には圧縮着火のためのエアサプライ(=スーパーチャージャー)を搭載しているが、感覚的にはほとんどNAのような気持ちよさである。そんな気持ちにさせられたのはやはりMTというミッションの影響もあるのだろう。以前乗ったCX-5の時はあまり感心しなかったけれど、改良が入った影響なのか車高が低くなったことによるレバー比の影響なのかこのフィールは悪くない。ロードスターのような気持ち良さ…とは言わないまでも、ロードスターを売っているブランドとして及第点のレベルになった。この3台の中で1番最後に乗ったのがMazda3だったということもあり記事のバランスに欠ける印象があるが(毎回かww)、この3台だったら「明日からこのクルマね」とキーを渡されても悪い顔はしないだろう。CivicのノイジーなデザインやMazda3の煩雑なスイッチレイアウトなどは不満ではあるけれど、いずれも世界の市場…特にヨーロッパで鍛えられた良さが感じられる3台である。ドイツの香ばしい小麦の味が感じられる硬いパンも、フランスのカリッとしたバゲットやオリーブオイルと粗塩の旨みがたまらないイタリアのフォカッチャも美味しい。ただ、寒い季節や心が寂しいときに口にするうどんはカラダだけでなくココロも温めてくれる。今回テストした3台はこんな時代に癒しと楽しさを提供してくれるという点でも貴重な3台だと思うのだ。私もそんなクルマを手元に置いておきたいなぁ…もう少し濃ゆいお味のモデルが出たらねw