思ったより寒暖差の激しかった6月が今日で終わろうとしている。この1ヶ月更新が滞ったのは、ネタ切れではなく私の時間不足。仕事で新しい役割を任されたのはいいのだが、おかげでこちらにかける時間がなくなっていた。これでお財布にゆとりが生まれれば申し分ないのだけれど、その望みは少し薄いというのがちと悲しい。もうしばらくすると夏のボーナスが...という方もいるだろうが、毎年5月の出費が多くて大きな買い物はためらってしまうのだ。

というのも、5月は我が愛車 BPLegacy Touringwagon 3.0Rの自動車保険と自動車税の引き落としがあるからだ。必要経費であるということはわかっているつもりでも、この2つの出費はなかなか手痛い。これがなければもっと別のことにお金を回すこともできるけれど、浪費グセの激しい私はろくなことに使わないからこれでいいのかもしれない。


とはいえ、自動車にまつわる税制度について納得できているわけではない。特に自動車税に至っては排気量で税金が変わるというシステムが意味不明だ。環境負荷を考慮するというのならCO2排出量で見るべきだし、電気自動車だって現在の火力発電中心の国内の電力事情を考慮したら発電時に排出するCO2相当の税金がそれらのクルマに課される必要があると思う。予定通りであればこれで消費税もさらに上がるわけだから、そろそろ自動車への課税についても抜本的な見直しが必要だと思う。


でも、肝心な愛車であるLegacyについては納車以来手放そうという考えには一度も至らなかった。それどころか乗るたびにその性能や質感に魅了され、「これに変わるクルマがない」という事実に歓びと哀しみを深める日々を過ごしているのである。デビューした時から異様に好きだったのはたしかだけれど、まさかここまで惚れることになろうとは思わなかった。


その魅力はどこにあるのか。特に私が感じるのは次の3つだ。

1つ目はLegacyらしさと洗練を融合させたスタイリングだ。Leoneから受け継いだ2段になったルーフやDピラーをブラックアウトする処理はそれまで3代続いたディテールを引き継ぎつつも、どちらかといえば必要な要素以外を取り除く引き算の考えで作られているような印象だ。特に、ワゴンではこれまでテールランプを左右につなぐデザインとしていたものをやめたことでスッキリとした見た目を獲得。私の持っている後期型ではメッキのガーニッシュが左右をつなぐようになったとはいえ、それでも真正面から見たときの見た目はクドくはない。

そして、フロントマスクには「ホークアイ」と呼ばれる下に丸くえぐれたヘッドランプと六角形のグリルが備わる。このディテールが好評だったこともあり、Levorg以降のスバル車は全てこのデザインを採用することになった。そのおかげで、このクルマのデザインが古びたように感じないというのが嬉しい。世代的にはBRの方が新しいというのに、横並びにしてみるとBM/BRの方が別の時代に作られたのではないかと思わせるほどだ。


2つ目はMcIntoshのオーディオシステムだ。前期型も後期型も標準オーディオのパネルデザインが安っぽかったから、音場環境はもちろんのことデザインでもこのオーディオがついていることはどうしても譲れない条件だった。新しいナビへのアップデート等を考えるとむしろこれがついていない方が変更が容易だという話はよく聞くのだが、特に夜になってパネルが赤く光っている様を見ると「やっぱこいつでよかった」という充実感が湧いてくる。そして、肝心の音に関しては意外と低音重視の迫力のあるサウンドで、私が好きな洋楽のロックやポップスのような音楽がかかると即座に車内がライブホールへと変身を遂げる。一度カーオーディオの開発に携わっている方にその音を視聴してもらったことがあったのだが、自社の最新のシステムとは違う音のクオリティに感動していたようだ。プロを唸らせる音だったというのはやはり嬉しい。

そして、3つめはやはりこちら。3.0L 水平対向6気筒 EZ30だ。BE/BH型から出力と全域でのトルクアップを狙い、ダイレクト可変バルブタイミング&リフト機構を採用。その中身はズバリポルシェの「バリオカムプラス」そのもので、実際にはポルシェにそのメカニズムを提供するサプライヤーから同じ機構を仕入れてきた。4気筒エンジンを前提に開発されているこのクルマに前後長の長い6気筒エンジンを搭載して2.0Lターボに匹敵するパフォーマンスを手に入れるには、このメカニズムが必須だったということだろう。

ただ、走ってみると少しだけ不満がある。それは走り出しのトルクが希薄に感じられることだ。私の2006年型にはスロットルレスポンスを選べる”SI-DRIVE”も備わるが、デフォルトのSモードにしていてもその傾向があり、1番アグレッシブなS#だとアグレッシブすぎる...という状態。それと渋滞時の燃費が絶望的なこと以外は、このエンジンに欠点を感じたことはない。


というのも、それ以外については単純にいいというレベルではなく「比較対象がないほど素晴らしい」気持ち良さなのだ。この気持ち良さは、同じエンジン型式を持つポルシェでさえも得られない。ポルシェのフラット6は低重心化のためにドライサンプ化されているが、EZ30はオイルパンがある。たしかにドライサンプに比べれば重心は高いのかもしれないが、そのかわりエンジンからの音は静かで、クルージングの時の静かさは最新のSGPのスバル車を上回る場面もある。


そこから遅いターゲットを見つけようものなら、次の瞬間私の左手はステアリングコラムに取り付けられた大型のパドルシフトに伸びて、spec B用のアルミペダルに変えたアクセルをここぞとばかりに踏み込んでいる。3000rpmまでは6つのシリンダーが奏でる蚕の糸のように繊細なサウンドが、それを超えてくるとだんだん1つの束になってよられていく感覚がある。その中回転域のトルクと繊細で力強いサウンドに気を良くしてさらに踏み込んでいくと、5000rpmを境にまた景色が変わってくる。レブリミットの7000rpmの高回転域では大排気量NAらしい爆発音の連鎖による「クウォーン」という音とともに、後続車を一気に突き放しにかかるのだ。


SI-DRIVEのように、1つのエンジンで回転域で3つの表情を持っているこのエンジンはまさしくSUBARUが造りあげた傑作のひとつ。だから、Ameba Owndの自己紹介でもこのクルマのエンジンを「SUBARU謹製フラット6」と私は敬意を込めて呼ぶのである。私が年間数十台の新型車に乗ってもこのクルマを手放せないのは、シチュエーションによってパワーとトルクというシルクの糸を自在に紡ぎ出すこの名機があるからなのだ。

そして、梅雨らしいこんな雨の時期にこんなブログを書くのもこのクルマだからこそ。この世代から”Symmetrical AWD”と称するようになった独特の4輪駆動システムがあるから、高速で雨が降り出そうものなら私は笑みを抑えられない。このクルマの味わいは厳しいシチュエーションになるほど際立つ。そう、この鬱陶しい雨はこのクルマの味わいを引き出すスパイスのような存在なのだ。さぁ、来週はどこに出かけようかな。