ギリギリ昭和世代の私は改元を2回経験している。とはいえ、1回目は産まれて間もない頃だから元号が変わるということを意識して迎える改元は初となる。ニュースでは大きく報道されているが、このブログをご覧の多くの方も改元によって生活が変わるという人はそういないのではないのだろうか。でも、せっかくの改元だ。平成に誕生したこのブログ、さらに盛り上げられるようその瞬間をこれまで以上に楽しみたい。


今回お届けする話は

昨年デビューした「新型」Foresterだ。新型にわざと「」をつけたのは、昨年デビューした際にも言われたとおり「どこが変わったの??」という分かりにくいモデルチェンジだったから。今回テストをするというときも、キーに書かれていた”SK9”の文字を見てForesterであるということはわかっても、その姿を見るまで新型であるということは全く気がつかなかった。


でも、それが新型であるということに気がついた瞬間、新しいもの好きの私の心が踊った。昨年新型の中でも特徴的なX-BREAKとADVANCEの試乗を済ませていたが、直線中心のコースで性能を存分にテストできたわけではないからだ。しかも、このForesterにはLevorg&WRX S4の後期型から採用されている「アイサイトツーリングアシスト」が全車に装備されている。それはこれまで60km/h以上でないと受け付けなかったステアリングの操舵アシストが0km/hまで可能となり、追従クルコンの最高速度の上限も120km/hまで引き上げられている。その最新世代のアイサイトと現行Imprezaから採用が始まったSGPという新型プラットフォームの組み合わせは、現時点ではこのForester以外に存在しない。

まず低速域の支援が強化されたアイサイトツーリングアシストについてだが、制御の段付き感がさらに抑えられたことで使いたいと思う範囲がさらに広がった。SUBARUは一般道での使用を推奨していないけれど、高速や一般道を問わず渋滞の時こそ有効活用したいアイテムである。すでにこのクルマを買われた方はこのGWでこのシステムの凄さを体感したのではないだろうか。

そんなアイサイトだが、個人的には欠点があると感じていた。前方のクルマに追従クルコンをセットしたとき、前方のクルマが停止すればEPB(電動パーキングブレーキ)付のアイサイト車はブレーキの液圧を保持する機能を持っている。ところが、私のように遅いクルマをスイスイとかわして先頭に出てしまうとこれが使えないのだ。「当たり前じゃないか」と言われればそれまでだが、このGWの渋滞でブレーキを踏み続けていたドライバーの方々にはその気持ちを理解していただけることだろう。


これについてもツーリングアシストの採用とともにテコ入れがなされ、AVHというドライバーのブレーキ操作で停車した場合にその液圧を保持する機能が追加された。ヨーロッパ車をイヤというほど試乗している私には当たり前の機能だが、これがついたことで私はアイサイトのブレーキホールドに頼ろうとクルマを抜けないフラストレーションから解放された。しかしこのAVHはエンジンの停止ごとに制御が毎回OFFになってしまうため、使う場合は再度スイッチを入れ直すという手間が発生する。おそらくクリープを使って前進や後退をさせるケースを想定しているのかもしれないが、せめてAVHの設定をエンジン停止後も記憶しておいてほしいとおもう。

そして、新型ForesterのもうひとつのトピックであるSGPについては長所と短所を感じられたというのが率直な印象だ。長所は昨年テストしたImprezaでも感じたボディの強靭な剛性。今回はタイトなワインディングでスロットルを踏めるだけ踏んでアグレッシブに走ってみたのだが、どしっとしたフロアに取り付けられたサスペンションをきちんと動かすことができる上にフロント周りの剛性が上がったことでステアリングフィールもさらに自然になった。

しかし、そのクラスを超える質感と同時に痛感させられたのが「重い」ということだ。車検証上の先代からの重量変化は20kg程度しかないけれど、加減速やコーナリング時のGをカラダで感じるとそのタイムラグが同じプラットフォームのImpreza以上に気になることがあった。最初はいつものとおりエンジンとミッションのせいだろうと思っていたが、この2.5Lエンジンとリニアトロニックの組み合わせは今のSUBARUの中では比較的レスポンスに優れるユニットだ。それをもってしても拭えないこの重量感はボディから感じられるものとしか思えない。

たしかにその重量感があるからこそのドシっとした乗り味はこのクルマの魅力となっていることは事実だが、これでもう少しボディを軽くするかエンジンパワーが上がれば...ということは思わずにはいられない乗り味だった。逆に言えば、絶対的な動力性能や質感という点についてはエンジン音のガラガラした音質や風切り音が目立つ以外の不満は感じられなかった。


ところで、このForesterからグレード名の表記がガラっと変更された。これまでの排気量+アルファベットという表記から英単語での表記に変わったのである。たしかにエンジンは2種類しかないし、アイサイトツーリングアシストも全車に標準装備されるから差異をつけるポイントがあまり発生しない。そう考えるとこういう表記の方が実態に即しているのはたしかだろう。

ただ、私の不満はここにもある。グレード間での差異があまりないように見せかけて、細かく見ていくと各グレード固有の装備というのが存在しているのだ。たとえば、新型Foresterの最大のハイライトといえる「ドライバーモニタリングシステム」。これは2.0LハイブリッドのADVANCEに標準装備されるものの、他のグレードではオプションですら選ぶことができない。一方で今回乗ったX-BREAKには夜のアウトドアシーンを想定してバックドア裏面にLEDランプが設定されているのだが、これも他のグレードではオプションすることもできない。似たようなアイテムがディーラーオプションとしてはあるようだが、このLEDライトは日常の荷物の積み下ろしにも役立ちそうな気がした。

キーを返却するときに私の目の前にラッキーな数字が飛び込んできたけれど、このクルマの完成度自体は偶然のものではない。現在ではSUBARUの最量販車種となったクルマにふさわしい内容がきちんと備わっている。たしかにケチをつけたくなるポイントはあったけれど、最も売れているからこそしっかりと手をかけたということが乗れば乗るほど伝わってくるのも事実だった。だから、最新のSUBARU車からどれか1台と言われたらLevorgよりForesterがいいと私は思う。