一人芝居の九州予選、終了しました。
残念ながら、僕を含めて福岡勢が全滅しましたが、フェアですがすがしい「いいFight」ができたと思います。なにしろ、ある程度同じ条件の下で「勝ち負け」が決まる表現活動なんてのは、高校時代のアナウンスコンテスト以来なので、普段使わない感覚や感性が刺激され、とても面白い体験でした。
感じたこと、学んだことは様々ですが、ちょっとジャンルが多岐にわたるのでいくつかの項目に整理してここに記録しておきます。
【INDEPENDENT、そして九州予選】
いやはや主催者の皆様と九州予選の実行を担当したFPAPの皆様、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。
打ち上げでも主催者さんと話しましたが、INDEPENDENTというイベントは一人パフォーマンスの最強を決める異種格闘技線であり、それゆえに「ルール」がはっきりしています。だからこそ、演じる側にもそれを見て選ぶ側にも、実に多様な価値観が持ち込まれます。その上で、ある「決着」を導き出すためにできる限りフェアなリングを設けることに執心してくださったスタッフの皆様には頭が下がります。
今回は予選の前段階として、書類審査で、13組中6組に絞られましたが、福岡演劇では、ノーネーム&ノーマークな空中楼閣に何かを感じ、そして本番に押し上げていただいた配慮にはとても感謝しております。
書類審査で振るい落とされた方を含めて、このイベントにかかわった方すべてが納得する「決着」を導き出すことは不可能でしょう。しかし、この日記の表題にあえて「2011」と記したように、来年以降もこのイベントが続くことを願い、主催者の皆様の労に感謝したいと思います。今後もうちが参加し続けるというリベンジに燃えるような意思表示ではありませんが、この企画が確実に福岡のパフォーマーを耕していくことは確かだと思いますので。おもしろい時間をありがとうございました。
【空中楼閣のキネマおじさん】
はてさて、そんな中、空中楼閣からは、「キネマおじさん」という作品を出品しました。もとはLIVE百花繚嵐で永松亭が演じてきた鉄板のネタを、喋り屋でもある江口が上演することになりました。
客層もキャパシティも違う。いえいえ、普段はもっと狭い会場で、べろべろに酔っ払ったおじさん&お姉さんたちを相手に、もっとえげつないトーンのネタをやっているので、それを考えると、今回はあまりにも好条件過ぎる中でのパフォーマンスでした。
当初からの不安はただひとつ。「これって一人芝居なのか?」ということだけ。FPAPさんがセッティングしてくれた大阪INDEPENENTとのスカイプトークで、このイベントは「一人のパフォーマンスであればなんでもいい」という言葉を聴き、自信を持って「イロモノ」に徹することができました。
こうなると、勝ち負けはさておき、会場を沸かせることだけが最大の目標です。そういう意味では、「票」以上に「客」を動かすことができたという自負はあります。
やっぱりキネマおじさんはわかりやすいしおもしろい。反吐を吐きながら生み出した作品が活躍する姿は、やっぱり気持ちのいいものです。
【そして、ネタ順などで悩む】
「キネマおじさん」でいく!と決めると、次にぶち当たるのが何を上演するのかというレパートリーとその上演順序の悩み。 元祖にして究極である「タイタニック」は絶対として、30分の持ち時間ならあと2本か…。そう考え、ネタ選び&ネタ作りが始まる。
エントリー直後は「ゴースト」や「ボディガード」あたりが有力で、それから「ロードオブザリング」「バックトゥザフューチャー」のアイディアが出てきて、試作の日々でした。結局、3本のネタが決まったのは1週間前で、新作「アリエッティ」の執筆が始まったのが3日前。
そりゃあ、「台本」なんてものがないので、照明にしろ音響にしろ、スタッフに伝えようがありません。スタッフの皆様には、不安や不満を与えてしまいましたが、一切使わない=望まないという線で、ギリギリまで新作で攻めたいという気迫に賭けました。
鉄板→新作、と来ると、3本目はいろいろな意味で「キネマおじさんらしいネタ」を選ぼうと考え、本番前日に「タイタニック」→「アリエッティ」→「ロッキー3」というセットリストが上がりました。ド下ネタで逃げ切るというひどいネタですが、キネマおじさんには、そうした後ろ指を指される哀愁が必要であり、出てくる姿や立ち去る姿に観客が憧れを持つようではいけないのです。いわゆるやり逃げというのが本来のスタイルでしてww
結果的にみると、客層がヒットして「アリエッティ」が予測をはるかに上回る反応のよさ。振り返った今にして思うベストセットは「ロッキー3」→「タイタニック」→「アリエッティ」だったかなと思います。
もちろん、このネタ順が決まったからと言って、「キネマおじさん」が「票」を得ることができたかはわかりません。でも一人のエンターティナーとして、この日のお客さんに合った満足度を与えられたのは、もっと違うネタ順だったのかなと思います。
【ネタ順と並び、出演順】
終わってみると、今回のイベントは、「最終投票の潔さ」を除くと、出演者側にはとても不利な不安をあおられる要素がたくさんありました。もちろんそれは最終投票の公平さを配慮してのことなんですけど…、そのひとつが「自分の出演の順番」が当日(それも開演の一時間前)までわからないという恐ろしさでした。
大阪の本家インデペンデントでも同じように出番を直前まで決めずにやっているようですが、これがなかなか出演者にはストレスでした。ちなみに、僕は当日の朝一番にリハーサルで、僕のあとにはもう1ユニット、それこそ(順番が発表になる)13時までリハーサルという団体があり、リハで「何かが足りない」となっても対策の取りようがない中での出番発表待ちでした。そういう意味では、すべてのユニットが「平等ではない」という立場のライン上で「公平」であるという、特殊な状況でした。
昼食をどのタイミングでとるかなど、いろいろと調整を図りながらの13時。主催者から出番が発表されました。今回は主催者がリハを見た上で「興行」&「審査」という両面から僕の出番は前半のトリ、つまり3本目で休憩前というポジションでした。
結果的に、このネタ順がどう作用したかはよくわかりませんが、予選通過した作品はともに「前半の2本目」と「後半の2本目」、次点ともいえる得票数の3~4位作品は休憩前後の2本、そして得票が伸びなかったのがハナとトリの2本。なんとなく生まれたこのサンドイッチ現象には、主催者の選別眼には何らかの基準があったことを想像させますね。
そうすると、キネマおじさんは、ハンバーガーでいうとピクルスのようなものなのかな?けけけ。 【そんなこんなで本番の反省】 そして14時。出演者は事前に観客との接触を禁止された中で客入れが終わり、いよいよ本番が始まります。かつてラジオをやっていた時代に関わり、10年ぶりに再会した中原ちかちゃんの芝居は一本目だったので、キネマおじさんのメイクのままで鑑賞。残念ながら2本目の作品は見ることが出来ず、楽屋で小道具のチェックとセッティングを済ませ、もう一度だけネタを繰りなおしました。
「森田と林田」が終盤戦に近づき、暗い非常階段を上り舞台裏へ。あいかわらず、本番前や本番中の舞台裏に漂う負のオーラはすさまじく、役者をやっていて「一番嫌いな時間」をすごします。 本番の幕が開き、いざキネマおじさん!ぽんのステージに降臨!!
数日前にActor's Cafeで見せたときに比べれば、かなりやわらかいお客さん。芝居を見てリアクションをすることに多少は慣れている方々なので、あんまり変な緊張はなくパフォーマンスに集中できました。普段は「この面白さに気づいているのはあたしだけなのさ…」ってなトーンでクスクス笑っているような捻じ曲がった演劇ファンも、キネマおじさんの力技の前では「笑わせた」という手ごたえあり。
ただ、どんどんと興味が乗り出してくる客席を感じながら、「今日の6本の中で、うちだけ完全に浮いているな」という感触は自覚。そして、思いのほか、タイタニックとアリエッティの食いつきが良すぎて、「グダグダ感」を楽しんでもらうべきはずのロッキーが、完全にダダ滑りしていることには気づいていましたww
まあ、最後はやり逃げてステージを降りまして、イベントは20分の休憩に入りました。舞台裏で出番を待っていた酒瀬川さんと一言二言ことばを交わした気がしますが、少し燃え尽きてて何を話したか覚えてません…。楽屋で着替えて、休憩明けの3作品を見に行きました。
【結果発表】
そうこうして6本の上演が終わり、観客審査&投票に入る会場。結果は、長崎&熊本勢が予選通過、キネマおじさんは残念ながら大阪を迎え撃つ代表には選ばれませんでした。
しかし、この時点ですでに、会場を動かした手応えはあったので、素直に拍手を贈れました。福岡のお客さんに「ガチ」の投票をしてもらうと、ちゃんとした質の高い一人芝居を選ぶのだということに納得し、閉会しました。
ちなみに、この時点で、僕はメイクも衣装もはずし、私服姿だったので、送賓の際に、身内以外は誰も僕をキネマおじさんとは気づいていなかった様子でしたww役を纏って観客を欺き、作品の世界に連れて行くマジックの力は、それなりに認めてほしいなと思ったんですけどねww
【打ち上げ、新しい出会い】
ぽんの舞台に慣れた6人の役者とそのスタッフ。大阪の主催者を迎えるFPAPスタッフ勢ぞろい。これだけの人間がいたら、バラシには1時間も要りません。あっという間に、バラシは終わり、なんやかんやで2時間早い乾杯で打ち上げ開始。
審査が終わればノーサイド。同じ板の上で同じ苦しみを味わった仲間。しかも、「たった一人」で戦ってきた僕らには、手の内や苦労を語り合える出演者たちが最高の仲間に感じられました。
いろいろと、芝居のことやら何のことやら話し、気がつけば終電まで飲んでました。あんだけ声帯を酷使するネタのあとなのに、ほぼ休むことなく、いろんな人といろんな話をしました。
「キネマおじさんはいつでも何処でもやりまっせ」とか「今度は味方同士で芝居を作りましょう」とか、「キネマおじさんみたいに邪道なことばっかりやってるわけじゃないんですよ」とか、そんなことをあれこれ話してましたねww
いっぺん会って、その感性や人間性に触れてみたかった演劇人とも酒を酌み交わし、そして新しく出会えた面白い人たちとも挨拶ができました。個人的に、ここ数年で最良の打ち上げだったと思います。みなさま、長い一日、お疲れ様でした。。
【おまけではなく】
では、せっかくだから、今回出演した6作品を、FALCONさんの視点でメモしておきます。以下、出演順。
①クロッキーモンスター
江口の旧知の友達・中原ちかちゃんのネタ。役者の色気と女の色気、そしてアーティストとしての細やかさと芸人としての大胆さ。トップバッターというプレッシャーに動揺はあったのだろうが、それを感じさせないパフォーマンスで見事九州予選の開幕を飾る。
内容は「スケッチブック」の中の「白黒」の世界の住人が、3次元と2次元という、次元の違う曲がった感情でコミュニケーションしたらどうなるのかということを表現した作品。衣装やメイクも白黒の役者が、巨大なスケッチブックの背景の前で繰り広げる世界観に、演出のアイディアが光った作品。
ただ、「見せるアイディア」を上回るような意外な展開や明確な変化が台本になく、「世界」を表現したまでにとどまった印象を受ける。同じアイディアを、30分や1人という枠を超えて表現すればまた一本ネタにできるかなというほどに、「見せるアイディア」に関しては、今回6作品でもっとも秀逸だったと思う。
そして、劇団ぎゃ。の結束力の強さ。メイクも二人係、PAも演出もばっちりスタンバイしていて、「ぎゃ。」という集団の実行部隊として、たまたま1人がステージに上がっただけ…と言っても過言ではないほどに、総力を挙げてこのパフォーマンスに関わっている姿勢には感動。「これは私の作品だ」というプライドが明確だった。
②森田と林田
今回最も票をとった作品にして、今回唯一、本番を拝見することができなかった作品。以下に記す内容の概要は、いろいろな人の感想をもとに勝手に導き出しているので少し危ういかもww
話の構図は、「王子と乞食」「パーマンとコピーロボット」の関係のように、「自分と同じ顔を持った別の人格」との物語。ただそれが、「成りすまし」で入れ替わる(すりかわる)という手法ではなく、お互いの人格を認識した上で互いの利害の元に入れ替わっていくと言うカラクリ。
こんな複雑な構造が、たった一人の30分で成立するのだから、この台本のカラクリの精度が高かったことはいうまでもない。現に、「台本が良かった」「仕掛けに感動した」という意見は内外から多く出ていた印象。
そして、その本をたった一人で演じた役者の力。私は本番前に、プレッシャーのあまりに楽屋で駄々っ子のようにデングリ返る縁者の姿を見たwwそのプレッシャーをはねのけ、見事に観客の支持を集めたこの役者の底力に、破れた側は大きな期待をかけたくなる。
③キネマおじさん
後にも先にも、このキャパでこの客層を相手にこのネタをやることはないと思うが、ネタの面白さと見事さは伝え切れたと思う。一方でキネマおじさんの「くだらなさ」や「だらしなさ」が伝え切れなかったのが残念に思う。
永松にあわせて書かれているネタは、さすがに江口では字数が足りない。最後の最後にグダグダに終わった感じが、むしろキネマおじさんの本来の姿であり演出であることに、いったいどれぐらいの人が気づいたのだろう?
まあ、気づかれなければそれは演出ではないので、もっと精進し、場数を重ね、「立ち技最強」を名乗れるようになっていければ。
④ダダモレ
以前から目をつけていた「大胆」かつ「しなやか」な女優・酒瀬川さんの作品。後で打ち上げで聞くと、今回は初めて作・演出から上演までを自分自身のクレジットで行った作品とのこと。その割にはまとまっていたと思うし、芝居の種類やパフォーマンス・空間の使い方のバリエーションがもっとも豊かだったのは、この作品だと思う。
内容は、「誰にとっても世界で一番ごく普通な人格」である「自分」という素材を通して、自身が生きる「今日」、そして進んでいくであろう「明日」を表現していた。
コンテンポラリーダンスの要素あり、パントマイムやエチュードの要素あり、そして、無対象を使った電話越しでの台詞回しあり。ある程度まとまっている中で、INDEPENDENTの「1人であればなんでも可」ということに手広く挑戦したのはこの作品だと思う。
ドラマに必要な「落差」はかなり見えにくいのだが、やっぱり「イイ女」ってのは、舞台にいるだけでテーマになるもんだなと再確認。もっとも秀逸だと思ったのは、トイレのエチュード部で、馬鹿馬鹿しくもセクシーで一見の価値あり。
⑤時間切れを待ちながら
今回の6人の役者の中で、ポテンシャルの高さはトップクラスなのがこの白濱さん。あれだけあくの強い役を正確に再生できるのに、スタッフといい白濱さんといい、なんと腰の低い人たちなのだろう。いつもふてぶてしい江口には、こういう人当たりのよさを学んでほしいところ。
内容は、「無対象」型の1人芝居の王道。ある殺人犯の死刑執行の朝から始まる回顧劇を、一人の役者が、いくつもの役を演じ、人格や空間・時間を移動しながら伝えていく話。
なにより、その芝居のうまさに感動。わざとらしくなくても台詞が客席に飛んでいるし、「職業・年齢・場所」など外的な要因から演技プランを導き出し、それを科学的に再現していくパフォーマンス。おそらく、この手の科学的根拠に基づいた芝居で競わせたら、福岡の役者の8割以上は白浜さんにあっさりKOされるだろう。
台本の運びと、そこから観客へ与える情報のコントロールなど、手綱の握り方もすばらしく、久しぶりに声を出して笑った。台本・芝居ともにFALCONの大好きな芸であり得意だと自負している芸当。今回は江口に邪道な真似をさせたが、近いうちに正攻法のジャンルでも一戦交えたいと思う芸人&パフォーマンスだった。
久しぶりに「いい男」に出会った。芝居の仕方や台本の読み方もわかっていない福岡の大部分の役者さんたちは、本選でこれを見逃してはいけない。
⑥坂道コスメティック
今回の6ユニットでは唯一、フリーの作演出とフリーの役者が組んでいるパターン。役者としての村井さんは客席から見たことがあり注目もしていたのだが、はてさてどんなパフォーマンスをするのかお手並み拝見。
連れてきたのが羽山ショーという女優。本番の1ヶ月ほど前に顔合わせしたときの印象と、本番の日に楽屋や舞台や打ち上げで見た彼女の印象があまりにも違い、驚く。こんな若くてこんなにじゃじゃ馬そうな、おもしろい素材をノーマークにしていたことを恥じながら本番を鑑賞。
内容は1人芝居のひとつのパターン「今の自分を複数のカメラアングルで捉えていく」という台本。3脚の椅子を置き道具として使いながら、仕事やプライベートや恋愛などに揺れる女性像を描いた。
音楽は差し込んであったのだが、やはり台本そのものが描いている落差があまりに単調で、ドラマティックにひきつけられる部分は薄かった。清潔感はあるのだが、毒を感じることができずに、ライスやパンだけをおかずなしで食べている気分になった。
ホンワカしているように見えて実は鋭利な突破力とエネルギーを持っているこの女優の、素材の面白さをもっとサディスティックに遊んであげたほうがよかったという気がした。なにか芸人として満腹感に包まれているのかな、村井さん?
むちゃくちゃ長くなりましたが、これで空中楼閣なりのイベントの総括おしまいです。さあ、夏の予定が空いたから、また暴れるゾェ。
PS:キネマおじさんの左腕の刺青は、胡散臭さを演出するために貼ってあるシールです。僕は体に紋々をプリントしているタイプのアーティストではありませんのであしからず。