そこに居るだけで嬉しかった | わがまま通信@team.Sel*fish

そこに居るだけで嬉しかった

🐰時期的には、利根川の遡上マスを狙うべく、朝な夕なにキャストを繰り返している…ハズだった。

 

…ところが、シーズンに入っても、利根川どころか釣りそのものが、できていない。

 

…理由は色々あるが、主な事情は、年老いたおふくろだ。

 

…90歳になるおふくろは、これまでに大きな病気もせず、高齢ながら、大抵のことは人の手を借りずに生活してきた。

 

…だが、いつまでもそれが続くワケではなく、昨年、とある大きな手術をして、術後は何事も無いと思われていたが、今年に入って再び治療を再開することとなり、それが結構長い時間を要することとなった。

 

…足腰もだいぶ弱ってきたので、なかなかに大変そうではあるが、本人は意に介さず、周りの助けなど要らないよ、とそれがまた、強がりには見えないという、なんだろうね、孤高の人と言うか、自分に自信があるんだろうと思う。

 

…それでもまあ、できないことは増えてきているので、細々助けてやるのだが、アタシが退職したら、こちらの都合に構わず電話が掛かってくるようになった。

 

…先日も、隣町で用事を済ませ、珈琲でも飲んでいこうと、店に寄ろうとした途端に、電話が鳴った。

 

…本人曰く、救急車を呼ぶほどの大事ピリピリが起きたと。

 

…さすがにそれは電話して当然だわ!と思いつつ、だったら、救急車を呼べばイイじゃないか、と息子のアタシは思うのだ(←実家と消防署は目と鼻の先だし)が、スグに来てくれというので、寄り道を諦めて実家へ向かったが、日中は、どんなに急いでも、1時間は掛かる。

 

…ようやく到着したら、おふくろは廊下に座り込んでいて、顔にも擦り傷がたくさん付いていた。

 

…事情を聞くと、ゴミ出しの帰りに転んで、動けなくなったピリピリのだという。

 

…立ち上がれなかったので、這うように家に戻り、アタシに電話をしたらしいのだが、そこまでに数時間掛かっていると知って、それこそ息子を待たずに救急車だろう!と。

 

…その後は、病院救急外来で診察を受け、家に戻ったのは夕方だった。

 

…本人は、どこも痛くないと言うのだが、そりゃあ、年老いたらステゴザウルス並みに、痛みだってスグには感じないんだよ、翌日辺りに物凄く痛くピリピリなるぞ!と忠告したが、聞く耳を持たない。

 

…それどころか、こんなみっともない顔(傷だらけ)じゃ、外に出られないから週明けからの通院治療はイヤだと言い出したので、見栄を張るのと病気を治すのと、どっちがムキー大事なんだ!と。


…ああ、どんなに体が衰えても、プライドは年を取らないんだと、改めて思ったよ。


…自分の考えが何より正しくて、意に反することは許さない人だったし、多感な時期の息子の反発など、どこ吹く風だったもの、未だに子どもは親の言う事を聞いて当然だと、疑わないんだろうな。

 

…自分が遊びたいから、年老いた母親に対して、文句を言いたいワケじゃないし、もちろん今は、そのような状況ではないし、さすがに90歳になれば、何が起こってもおかしくはないし、それを気に掛けるのが、還暦を迎えた息子夫婦だけでは、イザという時に手遅れになりかねない場合だって有り得るから、カミサンと相談をして、今更ながらに『介護保険』の認定申請をした。

 

…もちろん、本人に相談したら「そんなのは要らない!」と言うに決まっているので、こっちで勝手に申請を出し、後は、実親の介護経験があるカミサンに上手に説明して貰って、本人に承諾させたワケだ。

 

…おふくろは、介護は自分で何もできない人が受ける、いわば「老いぼれ」のサービスだと思っているようで、ウチのばあちゃんが認定を受けた年齢と同じになっても、そういう自覚は全然無いらしく、余程困ったことがあったら、オマエに電話するよくらいの認識しか無かったが、さすがに今回の転倒騒ぎで懲りたのか、案外素直に聞き入れたのは、息子としては意外過ぎる程だった。

 

…アタシも介護保険とは、そういうモノだと思っていたフシはあるが、カミサンの説明を聞いて納得したのは、介護保険とは、介護する側とされる側が『共倒れにならないための公共サービス』だから、積極的に利用しなくちゃダメなんだと。

 

…家族だから、面倒を見るのは当たり前じゃなく、いろんな人の手が入った方が、安心できることが多いと言われて、なるほどそうだな、と。

 

…身内だけだと、どうしても冷静でいられなかったり、口げんかピリピリが始まったりで、お互いを大事にする気持ちを忘れてしまうこともあるよね。

 

…状況によっては、高齢であっても適用に該当しないという判断が下りる場合もあるんだけど、当たっても外れても、申請をしておけば、本当に大変になった時に、その後の手続きがスムーズなんだそう。


…どうにもならない状況になってから、申請するのでは遅いんだなということが、今回のことで良く分かったし、65歳から申請できるんだってね、自分のこととして、覚えておくよ。

 

 …案の定、次の日から体が痛くピリピリなって大変だと言うので、様子を見に行ったが、いつも通りに生活しているし、まあ、骨折でもしたら、それこそエラいことになったろうから、大事に至らず何よりではある。

 

…何かあったら電話するように伝えて、近くの川へ行ってみたのは、ウエーダーで立ち込むような場所へは距離があるし、釣りがしたかったらというより、川の音が聞きたかったのかも知れない。

 

 

…そこで魚が釣れるとは、初めから期待はしていなかったけど、そこに居るだけで、すごく気持ちが落ち着いた気がしたよ。

【上】オランダガラシ(クレソン)

【下】オオカワヂシャ

 

 

 

…予想通り、サカナっ気は全く感じられなかったが、青空と水の流れる音が、本当に嬉しかった。

 

 

…後日、ダム湖へも行ってみたが、何かの時は、スグに動けるように陸っぱりで。

 

 

…ここでも何の気配も無かったけど、遠くに湖面を疾走するボートを眺めてキャストしているだけで、気持ちが良かった。

 

 

…キイチゴの実をたくさん見つけて、自然の甘さを味わえたのが、何よりのプレゼントだったな。

 

 

…釣行レポートのハズが、自分を取り巻く環境への嘆き節のようになっちゃったね。


…こんなふうに書くと、良き息子とは言えないかも知れないが、親子の距離感は、人それぞれ近かったり遠かったりするし、それが常に変わるものだと思う。

 

…残念ながら、今シーズンは、おふくろの状態が落ち着かない限り、釣りに集中できることは無いと思う。

 

…だから、ひょっとすると、イチバン良い時期に、自分の望んでいる釣りは、できないかも知れないね。

 

…そのぶん、皆さんの釣果を楽しみにしてますよ。

 

…でもまあ、アタシだって転んでもタダでは起きない性格なので、釣り以外にも楽しい日常を考えますし、本流に挑むチャンスは、伺ってますからね!

 

 

…週末です、御自愛下さい。