【今回のワンポイント解説】(真田丸:8月7日放送分) | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 今回は、秀吉の最期について、僕なりの考えを述べてみたい。

 秀吉の来し方をふり返ってみると、本能寺の変のあとすばやく明智光秀を討って、信長の仇をすすいだことが、天下人への第一歩だった。次に彼は、柴田勝家や信孝など、自分に敵対する勢力を叩きつぶしていった。現実問題として、自分が生き残るには、そうするしかなかっただろう。
 そして、秀吉の勢力拡大に危機感を抱いて対立した信雄を、屈服させた(信雄は家康と結んで小牧・長久手の役を起こした)。こうして、生き残るために目の前の危機を次々と乗り越えていった秀吉は、天下人への階段を登っていった。つまり、いつの間にか織田家の権力を、すっかり簒奪していたわけだ。
 ゆえに、死期が近いのを感じた秀吉には、自分の死後に起きる事が予想できた。自分が死ねば、諸将は生き残りをかけた権力闘争を始めるだろう。そうなれば秀頼の立場は、かつての三法師と同じようなものになるに違いない。

 そもそも、秀次を粛清したのも、秀次が疎ましかったからではない。自分の死後、秀次の子と秀頼との間で、権力闘争が起きることを怖れたからだ。それゆえ、秀次の妻子を侍女もろとも皆殺しにしたのではなかったか。秀次の子を宿している可能性のある者を、一人でも残したくなかったのだ。だが結果として、三法師のように幼い秀頼に、家督を託すこととなってしまった。彼は、秀次の粛清を心窃かに悔いたに違いない。

 かつて、自分が織田家に対して為したのと同じことをするのは、誰か。かつて自分は、信長に忠節を尽くした。だとしたら、これまで自分に忠節を尽くしてきた者の中から、簒奪者が現れるのではないか。そもそも、武家において主君に忠節を尽くしうる者は、武勇にひいで、政治や謀略の才にもたけた者だ。そのような者は、簒奪者としてのポテンシャルを持っている。そんなことを考え、「くれぐれも秀頼のことを頼む」と、周囲にくり返し懇願しながら、恐怖におびえていたのだと思う。
 なお、秀吉と豊臣政権についての僕の評価は、簡単だけれど『戦国の軍隊』や『東国武将たちの戦国史』の末尾にも書いておいたので、興味のある人は参照してください。

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次回は 8月 18日(木)19:00〜
テーマは「戦国の城から近世の城へ」です。

(西股総生)

《ワンポイントイラスト》



 秀吉死去で真田家はどう出る? 立場も心情も豊臣家寄りの信繁。一方信幸は建前を大事にしつつも内心気になるのは…!?

(みかめゆきよみ)

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