【黙って手を握りなさい】

コレは、ちょっと馬鹿げたアドバイスでした。

 

それでも、私は必死です。どんなことでも即、実行です。

家に帰り娘に、「今日、こんな事言われたよ。」と、話しました。

 

そして、「だから、手を握ってみようと思う。手を出して。」半信半疑で声をかけました。

すると、黙って右手を出しました。

 

私は、すかさずその手を左手の平で受け止めました。

ふっと、一瞬娘の口元が緩みました。

なんだか小さい頃に戻ったような顔に見えました。

 

私は、この反応がとても意外でしたが、言われた通りに黙って手を握る事にしました。

娘の手の平は、外に一歩も出ていないので真っ白でとても奇麗でした。

私は、思わず「奇麗な手やね。」そう、一言だけつぶやきました。

 

黙ってその手を両手で包み込み、静かに静かに撫でました。

白くて柔らかい手でした。その手は、今にも好けて消えてしまいそうに、か細く力もありません。

かろうじて暖かいのが、微かな救いです。

 

その時、私は死人の手に触れているような錯覚に陥りました。

でも、あったかい。今日も生きてる。そう思いました。

 

すると自然に、「今日も生きててくれて、ありがとう。」そう、ささやいていました。

この死人のような手が、いつか命のエネルギーが感じられる手になって欲しいい。

幸せをつかむ手になって欲しい。生き続けて欲しい。

そう、何度も何度も祈っていました。

 

「今日も生きててくれてありがとう。大切大切。」

私は、いつの間にか何度も何度も呪文のように唱えていました。