「ねえ、タカ。これなんだけどさ、どう思う?」

 

そうやって差し出されたものに、僕は冷静に顔を近づけた。

 

「なるほど。僕には特段問題があるようには思えない」

 

僕らは仕事上も常に互いに意思疎通を図っている。

そうでなければ、この仕事は成り立たない。

原稿も出版社とのやり取りも会議の予定も、

「これ、どう思う?」と互いの意見を聞くのだ。

 

そして、今も……

 

 

「だよね、セーフ!!んじゃ、これは火を通して晩ごはんにしよう」

 

「おっけー。賞味期限切れてるの2日でしょ、変なにおいもないから問題なーし」

 

(^^;)

 

書類でもなんでもなく、賞味期限を少し過ぎた食材のチェックであった(笑)。

一応言っておこう。

僕は重版率がハンパない物書きである。

そこそこ売れていて、本だけで生活できる作家だ。

これは世間的にも充分に自慢できることではないだろうか。

 

その作家がだ、賞味期限を鼻でクンクンして見極める……なんかすごくないだろうか?

とりあえず、笑える光景であることは間違いない。

 

嗅覚は何のためにあるか?

 

龍神のサインである「ふと香る香り」に気付くため。

四季を感じる、季節の香りに気付くため。

 

それはもちろん正解。

 

だけど、根本に存在する大切な役割があるのだ。

 

それが・・・

 

身を守るため!!!

 

というわけで、小野寺家では日々大切な安全確認が執り行われるわけである。

 

「クンクンクン……異常なし!!調理、許可!!」

 

そうやって、日々美味しいご飯を食べている。

 

嗅覚はまさに

「賞味期限を確かめるため」

にある(笑)。

 

いやいや、

さすがにそんなことばかりしているわけじゃあ、ありませんけどね爆  笑あせる

 

 

 
 
 
 
 

ワカさんは、我が家の厨人(くりやびと)ですから~。

 

 

好評発売中です!!

 

 

 

(令和3年3月21日 読売新聞朝刊)

 

 

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