キィーーーッ!!!
「ちょっとあんたたち!!」
わわわ、死神H氏だ!
僕はキーを叩く指を止める。
「な、なんでしょう?なにかご用でも」
「タカ、死神にご用でも?なんて聞かないでよ、縁起でもない」
ワカが顔をしかめた。
ま、普通の死神だったらそうだけど、
この死神はちょっと種類(?)が違うのだ。
詳しくは新刊をご覧いただきたいが、
この死神H氏は肉体を出ていく魂をあの世に正しくアテンドする「いい死神」なんである。
「特に用はないざんす。ただ、この部屋はミーの通り道だからたまに通っているのだけど、あんたたち最近顔が固いわよ。
何か悩んでるざんすか?ミーで良ければお悩みを聞きますけど」
H氏はそういうと、ヒョイとキックボードから飛び降りた。
なんと、最近の僕らのムードが伝わったのだろうか。
僕はワカと顔を見合わせた。
「いや~、さすがですねえ。悩んでるわけじゃないんですが、今書いている原稿が初めての試みでいろいろ試行錯誤してまして」
僕は頭に手をやって答えた。
そう。
今、書いている原稿がぶっちゃけ
「テーマが難しい!!」のである!!
これは初めての試みなのだ。
依頼がきた時は「これはおもしろそう」と思ったが、蓋を開けてみればなかなかどうして難解だった。
しかし、僕もプロだ。もうまもなく第一稿があがる。
待っていてくれ、D社さん!!
「あら、それは難儀ざんすね。でも、あんたたち、それって期待されてるってことなのよ。
神様は乗り越えられない試練は与えないってこと、ご存知かしら?」
「よく聞くわよね。だから起きることはちゃんと乗り越えられるって。いてててて」
目頭を揉みながら、ワカが言った。
彼女は僕の第一編集者だから、共に苦しんで……いや、取り組んでいる。
「まあ、なんとなくわかったざんす。
それでは、今からあんたたちの気持ちをスッキリ軽くしてあげるざんす。
まずですね、今の気持ちをミーに教えてくださいな」
今の気持ち?
「例えば、疲れた、難しい、目が痛い、うまく行ってるのか悩んでしまう、一言が出てこなくて悩む、とか、なんでもいいのよ。
感じていることを教えてちょうだいな」
「あ~、なるほど。
じゃあ僕は、難しい仕事で少し頭が疲れた、うまいてんぷらが食べたい、ついでに酒も飲みたい、だけど明日はリモート乾杯があるから今夜は我慢しようか、ってとこですかねえ」
僕の頭にカラリと揚がったてんぷらが浮かんだ。
ああ、うまそうである。
「私はね、なんとか今日中に目途を付けたい、ああ、晩ごはんどうしよう、いやまあなんとかなるでしょ、なんであいつの本がそんなに売れてんのよ、納得いかないわね、ちょっとムカつくんだけど、そして宮城なにやってんのよ、コロナ増えすぎだろバカヤロー!!ってそんな感じかな」
妻よ……
キミ、すごいことをさらりと言うねえ。
まあ、気持ちはわかるけど。
「あら?気のせいかしらね、なんかスッキリしたわ」
唐突にワカが言った。
僕も気が付く。
「ホントだ、モヤモヤが消えてる気がする」
え?
どうしてだろう?
するとH氏は、「そうなのよ!!」と大きな声を出した。
「とりあえず気持ちを外に出すと、大体スッキリするんざんす。
例えどんな難しいことに取り組んでいても、ちょっと今ハードで、とか、
頑張ってます、とか、気持ちを吐露すると苦しさがグンと減るのよ。
あんたたち、友達もいないからあまり外にそういうこと出さないでしょう?
これからはミーに言うといいざんす」
友達がいないは余計な気がするけど、
まあ、的を得ている。
僕らは日頃、淡々と粛々と仕事に取り組むから、もしかしたら知らずに行き詰まっていることもあるのかもしれないと思った。
「なるほど、いいことを聞きました。
H氏、これからはH氏も頼りにします。たまにはグチってもいいんですね」
「もちろんよ。ずっと心に押し込めたままだと疲れてしまいますからね。
よかったら読者の皆さんもどうぞコメント欄に溜まってることを書くといいざんすよ。
ただし、最後は明るく終わってくださいな。きっと心が軽くなるざんす」
と、いうわけで。
死神H氏がリュックに入れて、モヤモヤを捨ててきてくれるそうですよ(笑)。
ぜひぜひ、サクッと捨ててください。
僕も捨てたので、また仕事しますよ!!
いや~、本当にやりがいのある仕事だ(笑)、頑張りますっ!!!
「お待ちしてるざんす~」
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