「ガガさん、質問いいですか?」
僕はピンと腕を上げた。
「まったくなにかね、我はまだ眠いのだよ。なにしろホッカイド―旅行から帰ったばかりなのだよ」
ガガがむにゃむにゃと返事を返してくる。
「いや、ガガさん。前に『龍神は眠らんがね』って言ってましたよね?」
突っ込む僕。
「最近、我は眠る練習をしているのだよ。大体だな、人間ばっかり眠れてズルいではないか」
「そんなむちゃくちゃな」
僕はもう、苦笑いだ。
「ところで質問とはなにかね?」
「あ、そうそう。よく、恐怖や不安を感じやすい人っているんですけど……どうアドバイスすればいいんですかね?」
そう、よくこんな質問をもらうのだ。
特に最近。
不安でどうすればいいかわかりません。
もう怖くて逃げたいです。
どうすればいいですか?
ガガはそれを聞くと、
「まったく。タカはそんなこともこたえられんのかね?嘆かわしい」
と、ガッカリした口調で言い放った。
「そりゃ悪かったですね」
僕は下唇を突き出した。
「だがしかし、せっかくの機会だ。我が良いことを教えてやるがね。
その恐怖を小さくする方法だ」
そりゃ、ありがたい。
僕はホクホクとノートとペンを取り出した。
大事なことは必ずメモる のが、僕のやり方なのだ。
不敵な笑みを浮かべつつ、偉大なる龍神は続ける。
「簡単なことだがね。とにかく行動することさ。
耳にタコだと言われても、それしかないのだから仕方がないがね、ふん」
鼻息荒くガガが言った。
「なにはともあれとにかくやってみろ、ってこと?ふあ~あ」
あくびをしながら、ワカが聞き返す。
「さよう。恐怖を感じている状態では、すべての情報をネガティブに受け取ってしまうのだよ。
すると、そして恐怖の上から更に恐怖が上塗りされて大きくなっていくがね」
「あらま、そりゃ悪循環だわね。ふあ~あ」
ワカ、またあくび。
うん、もうちょっと寝ていたらいいんじゃないの?
ま、仕事がたまっているから早く起きてきたのだろう。
仕方がないか。
「たしかにそれはわかりますね。動かないでいると、頭の中での変な想像だけが、あたかも現実になってしまうような恐さが生まれてきます」
僕は言った。
これは僕も経験がある。こうなったらどうしようと思ってるうちは、とにかく恐怖が先に立つのだ。
会社を辞めて1年ほど経った時、僕はすごく恐怖を感じていた。
「そうだがね。だからこそ、行動するしかないのだよ。行動しているうちは、余計な不安を考えている暇もなくなる。当然、恐怖の上塗りもされないから恐怖が大きくなることはない」
そうだ、実際僕もそうだったことを思い出した。
「そうだろう?おまえらも経験したはずだがね。あれこれ難しく考えていたことが、実際にやってみたらすんなり解決したこと」
「あるある!」
「あります。あります」
僕とワカの声が揃う。
「恐怖や不安は、何もしないうちはどんどん膨らむが、実際に行動すれば勝手に小さくなっていくものなのだ」
偉大なる龍神は言った。
物事は外から見ているととてつもなく難しく感じるもの。
特に問題に立ち向かう時は、より難しく考えてしまうのは当然です。
ですが、不安が大きくなる前にパッパと行動に移してみる方が最短の解決策だったりするもの。
余計なことを考えて不安を大きくする前に、まずはやってみることです。
案外、
「なーんだ。こんなもん?」
ってことも多いんですよ。
「ところでガガさん。眠れたんですか?」
「いや。それが、なかなか難しいものなのだよ。やってみたら難しいことがわかったがね」
いやいや・・・この話の後にそれはないじゃあありませんか・・・(^_^;)
さすが、この龍神様には敵いません。
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