「タカや。『はたらく』(働く)ことの本当の意味を知っているかね?」
ガガが、ふいに僕に尋ねてきた。
「どうしたんですか? 突然」
今朝のガガはいつになく真面目なムードである。
僕が聞き返すと、偉大なる龍神は「ううむ」と吐息を漏らした。
「我は最近、思うところがあるのだよ。人間界を見ていると感じるのだが、働くことの本当の意味をわかっていないヤツがちと多い気がしてな」
「なるほど~、働くことの意味ですか」
僕は両手を頭の後ろで組んで、ソファに沈み込む。
確かにな。
改めて問われると・・・果たしてそれはなんだろう、とは思う。
「単純に収入を得る手段とかじゃないの? 収入ないとごはん食べられないじゃん」
コーヒーを淹れながら、妻ワカが呟く。
「さすがにそんな単純な話じゃないだろ。たぶんもっと何かあるんだよ、意味が」
偉そうに言ってはいるけど、僕も明確な答えがわからない。
すると、わなわなとガガが震えながら
「おまえら、こんなに我の教えを受けておきながら・・・・・・まさかまだわかっておらんのではあるまいな」
と、語気を強めた。
す・・・すみません・・・。
僕たちは素直に降参した。
そんな僕たちに、ガガは呆れたようにため息をつく。
「やれやれ、おまえらは本当に困った奴らだがね。いいかね?
『はたらく』とは、傍を楽にするという意味なのだよ。どんな仕事でも必ずその先で、誰かを楽にしているものなのだ」
レストランであれば、美味しいご飯でお客を楽にしてくれる。
鉄道会社であれば移動を楽にしてくれるし。
出版社であれば本や雑誌で読者を楽しい気持ちにしてくれる。
職場で一緒に働く仲間が楽になることもあるし、
なにより、お金を得ることで自分の家族を楽にすることができるのです。
「そして楽をさせるヤツの数が多ければ多いほど、その仕事は成功する。収入も上がっていくものなのだ」
「そういうことか~。じゃ、多くの人が喜んでくれる仕事であれば、それだけの人を楽にできてるってことなのね」
ワカが納得した様子で、深く頷いた。
どんな仕事でも、かならずその先で誰かを楽にしています。
事務だからとか、お客と接する職種じゃないとかは関係ありません。
どんな人でも、どんな仕事でも。
その先で誰かの笑顔を作っているのです。
毎日が同じことの繰り返しなんてことは、決してありません。
その日の出会い、その日のエッセンスが必ず存在しています。
はたらく=傍楽
あなたの頑張りは、必ず誰かの笑顔になっているんです。
ガガもそれを忘れないで欲しいと、願っています。
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