柔らかな風に乗った草花の甘い香りが、鼻孔を優しくなでる。
春のうららかな日和である。
こんな日はゆったりと空をたゆらいながら、人間たちを眺めるのも面白い。
賑わう街。
ショーウィンドウを覗き込み、きらびやかなアクセサリーや洋服に、憧れの目線を送る者。
背広姿で、足早に営業先へと向かう者。
オープンカフェで、友達と亭主の悪口に興じる者。
子供の手を引き、幸せそうに笑う者。
人間の行動を観察していると、その人となりが分かるものだ。
それと同時にひとつの疑問が生まれる。
「おい。我は疑問に思うのだが」
1柱の白龍が目線を送り、問いかけた。
「なんでしょう」
聡明そうな顔立ちの漆黒の龍神が、すかさず言葉を返す。
おそらく幾度となく繰り返されたのだろうと思わせるやり取りに、2柱の親密さが伺える。
「最近の人間たちは、何が重要なのかわからんがね」
白い龍神はそう言って、首を捻った。
古(いにしえ)より、人間は生きていく上で「重要なこと」を明確にし、それに集中して来た。
これが大事なことだ。
しかし・・・
「ええ。たしかに、何が重要なことかがわからず、どうでもいいことに躍起になる人間が多くなりましたね」
黒い龍神もそう頷く。
そして、困ったように首を振った。
「そうなのだよ。そもそも人間には、大切にすべき家族や友人がいるはずなのだ。子供を正しく教育する事や、仕事をきちんとすることも重要なことだ。にもかかわらず…」
「見栄のためのブランド服。会ったこともない有名人の噂話。他人の悪口のオンパレード。いつまでも見続けられるように作られたワイドショーに、何が言いたいのかわからないバラエティー番組…」
その意を汲んだかのように例を挙げる聡明な黒い龍神の言葉に、白龍は頷いた。
「そうなのだよ」
と、ため息を吐く。
「人間たちには大事なことを忘れないで欲しいのだよ。
周りの人に優しくすること。喜ばせること。
社会に恥じぬ生き方をすることこそが重要なのだ」
「どんな時でも『重要なこと』と『どうでもいいこと』を理解していることが大切ですね」
人生には重要なことと、そうでないことが入り混じっています。
もちろんどちらも人生には必要なものです。
無駄なことがなければ息が詰まってしまいますから、息抜きもくだらないことだって時には必要。
ですが、
「自分にとってより重要なことは何か?」
それを忘れてはいけません。
周りの人の評価を気にするとか、
高価なブランドを身に付けるとか、
他人の悪口を言い合うとか、
そういうことは本来どうでもいいこと。
そして、
家族を守り、幸せにすること。
周りの人を大切に思い、優しく接すること。
仕事など、生きる上でやるべきことをきちんとやること。
そんな、社会で生きる上で重要なことを大事にする。
丁寧に生きる、これこそが本質。
その姿勢が行動となり、空を舞う龍神様たちの目に留まれば。
どんな人にも龍神様から幸運がもたらされるのです。
ほら、今日も大きな空の上で。
そんな会話をしながら龍神様たちが人間を観察しています。
龍神様の目には、僕は、あなたはどのように映るのでしょうか?
日本とは八百万の神様の国。
龍神様に限らず、たくさんの神様が今もあなたの周りで見つめています。
おっと。
龍神たちが騒めき始めましたよ。
龍神好みの人間がいたようです。
龍神たちがわらわらと集まっていきました。
その輪の中心にいるのが、このブログを読んでくれている読者の方でありますように。
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今日もご愛読ありがとうございました!