「まったく昨日はエライ目にあったがね」
僕が昨日の遅れを取り戻すために、
朝からパソコンに向かっているとガガが声かけてきた。
「昨日は僕たちと一緒に気仙沼に行ったんですよね。なにかありましたか?」
昨日の行動を思い出しながら、僕は聞く。
そう、僕たちは昨日、お墓参りのために気仙沼に帰った。
太陽の光に照らされて、気仙沼の海はきれいだった。
そこで僕はハタと思い出す。
「そういえばガガさん。以前、『我は海は苦手なのだ』って言ってませんでしたっけ?」
「そうなのだよ!!海はしょっぱいではないか。しかし、昨日の海はあまりにも美しかったので泳いでみたくなったのだ。静かに海をたゆらっていたのだよ」
海をたゆらう龍神様。
それはそれで絵になるのではないか。
それでどうしてエライ目に合うのだろうか?
そんなことを考えていると、それを察知したかのようにガガが続けた。
「海をたゆらっているうちにだね、塩に浸かって塩蔵ワカメのようになってしまったのだよ!我は今、塩を撒きながら飛んでいるのだ!」
「そ、そりゃなんか・・・お気の毒といいますか・・・ぷぷぷ」
僕は塩を吹く龍神様を想像しながら、言った。
そして、心の中ではニヤニヤ笑いが止まらない。
「なんかカピカピになってそうだわね」
カラカラと、ワカが可笑しそうに笑った。
すると、その笑い声に引き寄せられるように黒龍さんが現れて言う。
「いえ。ガガさんは白龍ですから、どちらかと言えば、塩蔵クラゲかと思いますが」
さすがは、黒龍さん。うまいことを言う。
「とにかく、我は海は苦手なのだよ!我をみそ汁に入れて食べる気かね!?」
いやいや、食べませんって。
まあ、小野寺家ではみそ汁に塩蔵わかめをよく使うけど。
僕は普段の味噌汁を思い出しつつ言った。
お湯に入れるともどる龍神様。
そんな龍神様はガガだけだろう。
まったく面白い龍神様である。
ガガさんのおかげで朝から小野寺家は賑やかだ。
きっと今日もいいことがあるに違いない。
幸運も笑顔に引き寄せられてくるものだから。
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