「タカや。わかったかね!」
朝からガガが声をかけてくる。
「え、なにをですか?」
僕は意味が分からず眉根を寄せた。
ガガはいつも主語が抜けている。
ま、いつものことではあるけれど。
「我はいつも言っているではないか。『成功するより、失敗で得るものの方が多い』とな」
「ああ、昨日の話ですね?」
ガガの言葉を察した僕は、左の掌を右のこぶしでポンと叩いた。
昨日の船岡駐屯地の後、僕たちは角田宇宙センターを訪問したのである。
ここは宇宙航空研究開発機構、通称JAXA(ジャクサ)が宮城県角田市に持っている宇宙センターだ。
とはいえ別に「宇宙の法則」を研究しに来たわけではなく・・・
ロケット開発について、ちょっと勉強したいと思ったから。
何事も興味を持ったら、行く。調べる。見る。聞く。書く。
それが大事なのである。
恐らくガガさんは、そこで僕たちが見聞きしたことを言っているんだろう。
それは・・・
これ!!
皆さんは1999年のH2ロケット打ち上げ失敗のニュースを覚えているでしょうか?
実はですね。
まさにこれ、1999年に打ち上げ失敗したH2ロケット8号機のロケットエンジンなんです。
本物です!!
当時、日本はロケット打ち上げで、「29回連続」成功という、偉業を成し遂げていました。
いつしか「日本の信頼性は抜群だ」などという自信過剰な発言も聞かれるほどに。
その矢先、1998年2月に5号機が。
そして翌年11月には8号機が打ち上げに失敗したのです。
日本の信頼は、一気に崩れ去りました。
その時に、
「なぜ失敗したのか原因を徹底的に究明しよう」
と、海に落下している(ロケットの第1段ロケットは切り離されて被害の出ない海に落下させます)ロケットエンジンを捜索したんです。
係員さんのお話ですと、10キロ四方までは落下地点を絞れたらしいですが、そこからは自分たちで探すしかありません。
しかも場所は海底3000メートルの深海です。
誰もが無理だと思ったはずです。
いや、普通、無理です。途方もない捜索が必要になる。
ところがです。
なんと日本は、そのロケットエンジンを見つけ出したんです!!
なんという執念、そしてなんという奇跡。
それがこの写真のロケットエンジン。
現物です、すごくないですか?
そして徹底的に原因を解明し、改善を行っていきました。
その甲斐があり、改良を重ねた日本のロケット技術の結果は
改良型のH2Aは、39回打ち上げて成功率は97.4%。
H2Bは、7回の打ち上げですべて成功!!
(2018年9月現在)
こうやって、進化を遂げてきたわけです。
もしあそこで失敗せずに、欠陥部分に気付かずに開発が進んでいたら・・・
もっと大変な事故につながっていたかもしれません。
あそこで真摯に失敗に向き合えたからこそ、今の技術が得られたわけです。
「だから我はいつも言っているのだ。『今のうちに失敗しておいてよかったではないか!』とな」
そう言ってガガは大きな口を開けてガハハと高らかに笑う。
「自分の弱点に気付かずに、大きな舞台に立って失敗したらと思うとゾッとしますよね」
「失敗ってその後の大きな成長への道しるべなのよね、結局」
ワカも納得したように言った。
もちろん失敗をそのままにしていては意味がありません。
真摯に失敗と向き合い、「自分の何が悪かったのか?」を考える。
そうやって人って成長していくんです。
そう、今の日本の技術が高くなっていったように。
皆さんも何かに失敗したら
「今のうちに失敗しておいてよかった。すぐに直せるから。今から直そう!!」
そういう気持ちでいれば、必ず次の成功につながって行くと思います。
小さなことからコツコツと。
地道に実力を積み重ねるのが、大成功への一番の近道なんですね(*^-^*)
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