聞こえてくる声に思わず顔をしかめた。
僕は行きつけのカフェで
まったりと読書を楽しんでいた。
もともと歴史好きな僕は、こういう本も大好物なのである。
歴史の謎を想像するだけで胸が躍るというか、ワクワクする。
そんな僕の耳に飛び込んできたのが、近くに座った数人の女性たちの声だ。
友達や夫の悪口を肴に盛り上がっている。
「しかし悪口というのは、言っている人たちはいいかもしれないけど、聞いている人は気持ちのいいものじゃあないですよね」
居心地が悪くなり、早々に家に帰って来た僕が言った。
すると、
「そうなのだよ」
と、ガガが大きな声を上げた。
「やっぱり悪口って良くないんでしょうか?」
僕は繰り返し尋ねる。
「人の悪口を言っちゃいけません」、と子供の頃も教えられた記憶がある。
さて、龍神ガガの見解はいかに?
「タカの感覚が正しいがね。おまえは人の悪口を聞き、嫌な気分になったんだろう?」
「なりましたね。だから早々にカフェを出ちゃいました」
嫌な気分になるところには、居たくないものだ。
特に最近は、その感覚を大切にしている。
「結果的に周りの人に不快な思いをさせたことになる。そうすれば、自分に嫌な感情となって戻ってくる。悪口は言った分だけ損をし、運気も逃げるのだよ」
悪口を言えば言うだけ、運気に逃げられる。
そんなの絶対に嫌である。
「それにな。悪口を言い合う仲間というのは、信用できない人間なのだ。目の前で誰かの悪口を言うヤツは、他の場所ではおまえの悪口も言っているかもしれんがね」
「ああ~」
僕はあることを思い出して、声を上げた。
以前、友達のお医者さんがこんなことを言っていたのだ。
「ある患者さんが他の医者の悪口を言うんだよ。『あの医者は腕が悪い』って。そうすると、『ああ、この人はきっと他の病院では俺の悪口言ってるんだろうな』って思っちゃうよな」
って。
なるほど。
人の悪口を言う人はそういう意味でも信用されない。
人から信用されない人が、神様や龍神様から信用されるはずがないのだ。
「だけど人間生きてりゃ、たまには悪口とか愚痴を吐きたいこともあるじゃん? 無理に心に押し込めてストレスになるのも嫌だし、絶対に言わないのは無理だと思うけど」
ワカが疑問を口にした。
まあ、それも最もである。
「もし悪口を言いたくなった時は、言ったその分、他の誰かを褒めることだ。悪口と違って自分のいないところで褒められていたと聞けば、その人間も気分がよくなるし、おまえも好感を持たれるがね」
「そりゃいい」
僕は指を鳴らして言った。
そして、
「ガガさんも僕の悪口言わないでくださいよ。『タカにイジメられた』とか、『タカに追い出された』とか、もういろいろ言われて僕はですね……」
と、言うと、
「それは事実だから良いのだ! 我はイジメられたのだ、タカはひどいヤツなのだよ!!」
いや、それ・・・事実じゃないですから。
やっぱりこの龍神様には敵わない。
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