「やれやれ。おまえらちゃんと戸隠の九頭龍神にお礼に行ってくれたからな、我もひと安心だがね」





夕方のことだ。ガガがホッとしたように言った。


「我は龍神会議で九頭龍神に会うからな。世話になってるおまえらが礼に来んのでは我も面目が立たんのだよ」

「それはよかったです」


「ホッとしたらテレビが見たくなったがね、つけたまえ!!」


・・・テレビが好きな龍神様、まあ今更なにも言うまい。


テレビでは相変わらずコメンテーターたちが声をあげていた。


 

「ふん。ああでもない、こうでもない。人間界はまだまだ賑やかだがね」

ガガが茶化すように言う。


「なんかおおごとになってきたわよねー」

ワカもやれやれという感じで口にする。

アレだ。世の中はまだ日大アメフトの話題が花盛りである。


「タカや。人間はなぜ逃げんのだ?と我は言ったよな?」


「言いましたね」

僕は頷き、答えた。

命を守るためには「逃げる」のも大事。それが本来動物が持っている本能だとガガは言った。


「逃げるというのは、上手に負けるという意味もあるがね。それ以上、傷口が広がらぬうちに負けを認め、素直に謝ることでダメージを最小限に抑える。それがこの場合の『逃げ』さ」


納得。その通りだと僕も思う。


「ガガさんが言うのはそういうことですよね。僕もこういう場合、責任があった人は逃げたらまずいんじゃないかなと思ってました」

「つまりこういうことだがね。歴史上の成功者は、何度負けても決定的なダメージを負わなかった。だから巻き返すことができたのだよ。それが『うまく逃げる』という言葉の本当の正体さ」


ガガの言葉に僕は思考を巡らせた。

どんな名将でも全戦全勝というわけにはいかない。必ず何度かは敗戦を経験している。

大事なのはその負け方(逃げ方)なのだ。

織田信長は金ヶ崎の戦いで挟み撃ちにあったと知るや否や、さっさと負けを認めて逃げだした。

素早く負けを認めたことで、命も兵力も温存できた。

そして後の勝利へ繋げられた。


孫子の兵法においても「勝てない相手とは戦わない」とある。

つまり負けを素直に認めることだ。

そうすることが結果的に自分の身を守り、体力も温存することができる。

そして次への希望が大きくなるのだ。


「無理だと思ったら負けを認める。間違いを認める。そして素直に謝る。人間はおかしな生き物だから、言葉にするほど簡単ではないだろうがな。特に地位やプライドの高い人間ならなおさらだろう」


「たしかに偉い人ほど負けを認めない気がするわね」


ワカが腕を組む。


「だが負けを素直に認めなければ、いつまでたってもその原因と向き合うことができんがね。つまり成長がない。そういうやつは何度でも過ちを繰り返す」


吐き捨てるようにガガは言う。そして僕たちの方を向き直り、言った。


「その点おまえらは、素直に負けるからな。そこだけはまあ評価してやるがね」


そこだけは、は余計です(笑)。


「ってか私は無駄な力を消耗したくないのよ。意地を張るのは疲れるしさ。先祖代々、ケンカは勝つためにする主義なのよね」

ワカがシレっと言う。あの、あんまり過激なことを言わないように・・・(^_^;)。


「じゃあ僕たちの場合は大丈夫ですね。僕、いくらでも頭を下げますから(笑)」

僕とワカは両手を前に出して「ハハー、スミマセン、ゴメンナサイ」と声を合わせた。


自分を守るために逃げるべき時と、人生のために決して逃げてはいけない時。

これを見誤ると、大変なことになる。

ガガはいつも大切なことを教えてくれる。

 


 




ぷかぷかと、白旗のように(笑)。

 




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