前の話⇒https://ameblo.jp/teafool/entry-12466577065.html?frm=theme
事件のその後だが、すぐに俺の携帯電話で警察を呼び、男は連れられて行った。始めはシラを切っていたらしいが、公園の一部に設置されていたカメラに、男が瑠美を追い回す姿が映っており、俺たちの言い分が正しいことが証明された。
そして、音子は、猫の姿へと戻ってしまった。アパートの大家さんに「事件で助けてくれた猫だからどうしても世話をしたい」と打診したところ、「部屋に傷をつけた場合は修繕費用を出す」という条件で、飼うことをしぶしぶ認めてくれた。もともとある程度賢い猫だったこともあり、今のところは大きな問題を起こすことなくおとなしくしている。
「しかし……ほんとに、嘘みたいな話だよな……。猫が人の姿になって、数か月一緒に暮らして、俺たちを助けてくれて元の姿に戻るって……」
「でも、音子ちゃんのおかげで助かったし、それに、私たちがこうやって恋人同士になれたのも、音子ちゃんのおかげだよ」
「その通りだな……」
そういって、俺は足元にいる、猫の姿に戻ってしまった音子の頭をなでてやる。音子は心地よさそうに目を細め、俺の手に頭を摺り寄せてくる。
「本当に、いくら感謝しても、し足りないくらいだよ」
「にゃー」
人の姿だったならば、「当然だにゃ!もっと感謝するにゃ!」と言っているのだろう。今ではその様子がありありと想像できる。
「寒くなったら袢纏を作ろうって話もしてたのにね……」
「作ってやればいいんじゃないか?どうせこの姿でも寒いことには変わりないんだから」
「それもそうだね……音子ちゃん、どう?」
「にゃー!」
今度は「ぜひ作ってくれにゃ!」と言っているのだろう。
「じゃあ、今度生地を買いに行かないとね、お兄ちゃん」
瑠美もおそらく同じ言葉を感じているのだろう。
「そうだな……そろそろ寒くなってくる時期だし、今度の週末は俺も休みだから、一緒に見に行くか」
「うん。あ、そろそろ晩ご飯作るね」
そう言って、瑠美は台所へ向かおうとする。あっ、足元に電気コードが――
「きゃっ!?」
――思った通り、瑠美が電気コードに足を引っ掛けてしまう。ひっかけられたコードは、機械に接続された出力側が機械からすっぽ抜けてしまう。その出力デバイスが、あろうことか音子のほうへ向かっていき――
「にゃばばばばばばば!!」
「音子っ!大丈夫か!?」
出力デバイスが音子に接触してしまう。音子が激しい光に包まれ……そして、光が収まったのちに目を向けると……音子は再び人の姿になっていた。
「にゃっ!び、ビリビリするにゃ!ビリビリにゃっ!……にゃ?ビリ……ビ……リ?」
「音子……お前……」
「あいたたたた……。ん?今、久しぶりに音子ちゃんの声がしたような……」
瑠美が振り返り、そして、喜びと驚きが入り混じった声をあげる。
「音子ちゃん!人の姿に戻ってるよっ!!」
「またまたー、そんなことあるわけにゃ――」
音子は自分の体を見下ろしながら……
「にゃーーー!!戻ってるにゃー!」
「ね、音子ちゃん!早くこれを着てっ!お兄ちゃんはちょっとむこうを向いててっ!!」
「あ、あ、ああ、すまん!」
俺は猫から目をそらす……しかし、今回は俺の非ではないだろう言いたい……。
「もう大丈夫だよ、お兄ちゃん」
少しして、瑠美から声がかかる。振り返ると、そこには、まぎれもなく、瑠美の作った浴衣をまとった音子がいた。そして、音子は溢れんばかりの笑顔で言った。
「シンヤ、るみ……また人間の姿になってしまったにゃーけど、これからもよろしくお願いしますにゃ!」
あとがき⇒https://ameblo.jp/teafool/entry-12466577070.html?frm=theme