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 「じゃあ、お風呂に入ろうか、音子ちゃん。お兄ちゃんのことだからタオルでくるむだけだったんでしょう?そのままじゃ風邪ひいちゃうよ」
「ああ、頼むよ」
風呂に入れるかどうかは迷っていたところだったのだがな。しかし、音子はさっきまで気を失っていたし、男の俺が入れていいものかどうかも悩ましいところであった。
「おぉ、それはいいにゃ」
「あ、私が提案しといてなんだけど、音子ちゃんはお風呂大丈夫なの?猫ってお風呂に入るのを嫌うイメージがあるんだけど……」
「うーん、にゃーは特に気にしないにゃ。むしろさっぱりしていいと思うにゃ」
「珍しいな。じゃあ瑠美、頼むよ」
「はーい。じゃあ音子ちゃん、いこっか」
「はいにゃー!」
「あ、お兄ちゃん、その間に音子ちゃんの今後のご飯とか買ってきてもらっていいかな?」
「はぁ……この雨の中また外出するのか……。まあいいけどな。他に買い忘れたものとかはないか……」
「うーん……できればでいいんだけど、よさそうな服の生地を買ってきてくれないかな?」
「服の生地?」
「うん、音子ちゃんの服の生地。さすがにずっとタオルでくるむだけっていうのもどうかと思うし、それに猫ちゃんの大きさだと普通の服は着れないでしょ?下着とかは無理だと思うけど、羽織る服ぐらいなら作ってあげられると思うし」
なるほど。瑠美は手先が器用だし、そういうことは得意だったな。子どものころに、持ってる人形の服を作ったりしていたし。
「わかった。よさそうなのがあったら買ってくるよ。サイズはどのくらいがいいんだ?」
「うーん……この時期ならあったかいから、それほどしっかりした服じゃなくてもいいし……浴衣かな……最低限B4の紙一枚くらいの大きさがあれば……ううん、洗い替えもあったほうがいいだろうから2枚分くらいかな。それと、浴衣の下に着るための白い生地を同じ数だけ。あと、帯になりそうなものがあるといいな」
「了解」
浴衣か。作る手間を考えると良い選択なのかもしれないな。冬場だともう少ししっかりとした服でないと寒さをしのげないかもしれないが、幸い今は初夏。しばらくは服については心配がなさそうだ。
 
 

 



 

 

(ガールズトークinバスルーム)
「お風呂にそのままは入れないから洗面器にお湯をはったけど、湯加減はこれくらいでいいかな?」
「おぉ!快適だにゃ!」
「よかった。じゃあついでに私も入ろう」
「にゃ!」
 
「ふう、あったまるにゃぁー……」
「もうちょっと早く入れてあげればよかったんだけどね……。お兄ちゃんも、あっためることは考えたんだと思うけど、音子ちゃんは女の子だし、そういうこともあってお風呂に入れることはできなかったんだと思うから、あまり責めないであげてね」
「いやー、にゃーもるみが帰ってくる直前までは気を失ってたし、それも仕方ないにゃ。それに、連れて帰ってもらえただけでもありがたいと思わなきゃいけないにゃ。で、るみ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかにゃ?」
「ん?なにかな?」
「ぶっちゃけ、るみはシンヤのことが好きなのかにゃ?いや、むしろ好きだと断言できるにゃ」
「なっ、なななななな、なんでそれを……っていやいや、そんなことないよ。それはどういうことかな?音子ちゃん?」
「るみ……慌てすぎにゃ……。そして顔が怖いにゃ……。隠さなくても、さっきのるみを見てたらもうすでにばればれにゃ。まあ、シンヤは気づいてなさそうだがにゃ。あれで気づかないとか、シンヤの鈍感さも筋金入りな気がするにゃ」
「……」
「で、どうなのかにゃ?まあ、言いたくなければ無理にききだすことはしにゃーけど」
「……うん、音子ちゃんの言うとおり、私はお兄ちゃんのことが好き……だと思う。男の人として好きなのかどうかは、ちょっとまだわからないけど……。少なくとも、家族としては好き。一緒にいて、すごく安心するし。それに、私ってすごくドジなほうだから、お兄ちゃんがいないと間違っちゃうこととか失敗しちゃうことも多いし、助けてもらうたびに、『私はお兄ちゃんがいないとだめだな』って思うの。昔からそうだった。でも、お兄ちゃんが家を出てから、私も『しっかりしなきゃいけないな』と思って頑張ったんだけどね。これでも、自分ではだいぶ変わることができたと思ってるんだよ。
……でも、やっぱり、頑張ることばっかりは、ちょっとしんどかった。やっぱり私はドジなんだけど、でも、周りが『しっかりしてるね』って言ってくれるようになって、周りの人がそういってくれればくれるほど、『しっかりしてなきゃいけない。ドジな私じゃいけないんだ』って思うようになっていったの。
こっちの学校に進むときも、お兄ちゃんのところにくるか、一人暮らしをするか迷ったんだ。『しっかりした私なら一人で暮らせるかも』って。でも、やっぱり不安もあって、それで、ダメもとでお兄ちゃんに『一緒に住むなんてだめだよねー』って話を切り出してみたの。そしたら、『おう、構わないぞ』って言ってくれて」
「……」
「それで、一緒に住むことになって、それからはすごく気持ちが楽だったの。『しっかりしなきゃいけないな』って思うことは変わらないけど、お兄ちゃんは『しっかりしなきゃっていう私』だけじゃなくて『私らしい私』も全部見てくれるから。だから、すごく安心できるの」
「……」
「って?音子ちゃん?」
「……きゅー……。の、のぼせたにゃー」
「ね、音子ちゃんっ!?ほんとだ、顔が真っ赤っ!あ、扇いであげるから、ちょっとお湯から出て!」
 

 


 

 
「ふぃー、生き返るにゃー」
「もう大丈夫そうね。ふぅ、よかった」
「あれだにゃ。るみののろけ話が長すぎだったにゃ。それに、お湯のあったかさもあったにゃーけど、るみの話があっつあつすぎだったにゃ」
「っーー!ね、音子ちゃん、この話はお兄ちゃんには内緒だからねっ!」
「ふっふっふ、るみ、顔が真っ赤にゃーよ。大丈夫にゃ。別ににゃーはシンヤにはこの話はしないにゃ」
「ほっ」
(……でも、まあ、シンヤはいろいろと鈍いから、それとなくサポートしていければいいんだけどにゃー……)
 
「おーい、瑠美ー音子ーもう風呂から出てるのかー。買ってきたぞー」
「あ、お帰りお兄ちゃん」
「にゃー。もう出てるにゃーよ。ぽっかぽかにゃー」
 

 

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