泣き叫ぶばかりか暴言を吐き、自分の思いを通そうとするためには手段を選ばないレッド。


出会ったころは、どうかかわればいいのか、途方に暮れていた。


それに加えて困ったことがあった。


私は2学期からの代替教員として入ったので、以前からかかわっていた教職員はそれぞれの考え方を私に伝えようとしてきたからだ。


レッドが泣き叫ぶと、「さくらこ先生がレッドに付いてください。他の子どもは私が見ています」と、親切な申し出を受けることもあった。


しかし、担任して間もないのに、他の大勢の子どもたちを放ってはおけない。


板挟みとか、好意を断ることによる同僚との関係性にも悩まされた。




あるとき、「なぜレッドはあれほどまでに泣き叫ぶのか?」と同僚から聞かれた。


私はシュタイナーの治療教育講義の中にヒントはないかと探っていたころだったので、推測を述べた。


『レッドの感覚体は、非常に敏感である。傷口のある手で、物を掴むようなものかもしれない。


それから、感覚で傷ついたり刺激を受ける範囲は、からだの周囲に広がっており、空気の動きや熱の変化にすら反応しているようだ。


また、泣き叫ぶことは、肺の機能と関係しているかもしれない。

泣くことで、肺が膨らみ、酸素を十分に取り入れようとしているなら、今の段階では泣くことも必要…。』


その推測をもとに、私はレッドとのかかわり方に一貫性をもたせる努力をした。


悪いときはダメという←結果として泣かれてもOK


頑張っているとき、泣かずに伝えたときには褒める


子育てでも教師でも、基本はこれ!

これを死守するしかない!


だから、レッドが泣き叫ぶときには、教室から出てもらって、クールダウンする時間をとる。


そして私は、全体の指導を軌道に乗せられるよう、ひたすら頑張った。


レッドの機嫌をとって黙らせるより、波風を立てても改善させる方法を選んだのだ。