「スケジュールの習得が難しい子はヒメギフチョウ ?」
自閉症スペクトラム(AS)にはいろいろなタイプの子どもたちがいる。一人ひとりASの特徴を持ち、生きづらさを抱えている。穏やかな子もいるが、中には自傷や攻撃などの激しい子もいる。ASの子どもたちには失礼だが、私はよくスケジュールなど物事の意味理解の難易をチョウに例えて、以下4つのタイプで説明している。
①モンシロチョウ タイプ
食草の幅がとても広く、キャベツやブロッコリー、アブラナなどアブラナ科の植物なら何で
も 食べる<すぐ理解する>タイプ。このタイプはスケジュールを実物や絵カード、文字等
で教えると、すぐに理解して使い始める。
②アゲハチョウ タイプ
食草の幅が広く、カラタチやサンショウなどミカン科の植物なら食べる<理解しやすい>
タイプ。このタイプはスケジュールを何回かていねいに教えると、その意味を理解し、使うこ
とができる。
③アオスジアゲハ タイプ
あまり知られていないが、黑の翅に青緑の帯のパステルカラーが美しいチョウ。食草の幅は狭く、クスノキ科しか食べない<理解しにくい>タイプ。このタイプはスケジュールが入りにくく、何度も工夫することで、習得する。
④ヒメギフチョウ タイプ
春カタクリの花が咲くころだけ姿を現す”春の女神”と言われる美しいチョウ。春先の短期間だけ地上に出てくるウスバサイシンやカンアオイのみを食べる<きわめて理解が難しい>タイプ。このタイプはスケジュールを教えようとしても、全く受け入れず、大きな混乱を見せる。対応を誤ると、強度行動障害のリスクが高まる。
私たちはモンシロチョウやアゲハチョウタイプの子どもたちにはよく出会う。アオスジアゲハタイプにも出会う。しかしヒメギフチョウタイプはまれである。もし出会ったら、そうするか?スケジュールや生活をどう教えればいいのか?何をやっても通じない、全く歯が立たない。親として、支援者として、無力を感じるだけ・・・。そんな時、私たちは必死にその子の食草(好きなもの)探しをする、その子の特性を徹底的に見直す。失敗しても、失敗しても、また挑戦する。いつかきっと手掛かりが見つかるはず、と信じて・・・・・。
そして食草が見つかった時、芋虫はいっぱい食べて、春の女神に変身する。