怒りを抱いて顔を睨みつける
自分には全く影響の無い事柄だけども
其の相手に深く思いをたぎらせて

自分ができる事は他山の石にしていく事位しかできない
だからこれば自己満足の義憤なのだ


知らなかった

子供だから

つい…

なんて言葉を過ぎらせているその相手に
ただ無言で視線を向ける

わたしはあなたにはならない
けど軽蔑はしない
それよりももっと侮蔑の意味を込めて微笑みかける


泣かないことが良い子の条件だと思い
泣かなくなったのはいつからだったか

泣かない事があたりまえすぎて
泣き方を忘れる何ていうのは嘘だと思う
だっていつだって表情の裏に
冷たく熱いものが漣立てる

確かにタイミングを見失うけれども
やっぱり上手く泣けないけれど

こうして苦しいままに泣いている

呼吸ができるのに
喉の奥がまるで海水で満たしたかのように
塩辛くてそして痛い

泣きはらした顔はすぐに戻るくせに
まだ疼く喉に苛立ち
首に指を絡ませる
テレビで流れた情報頼りに
今日と明日の境目で
東の空を見上げる

雑木林で削られた東の空は
猫の額のようだけど
嘘みたいに雲ひとつなくて
期待を胸に窓辺に座る

風さえなく
木々も静かに夜を過ごす
天体ショーとはいかなくても
ちょっとしたわくわく感を味わいたくて

冷える身体に毛布を巻いて
じっとその時を待つ
――彼女は唇に笑みをのせて言う。

手にした小説の一文を読んで
わたしはその言葉通りの表情をしている事に気付く
ただ違うのはその感情

紙の中で彼女は微笑む
紙の中の彼に
優しい限りの暖かい笑みで

本をを手にしてわたしは微笑む
思い浮かべた彼に
冷たい瞳と冷笑を限りなくたたえて

わたしは唇に笑みをのせて言う
さして寒くもないのに手がかじかみ
息は白く浮き上がる

ほんの少し前は日に日に空が高くなり
届かぬ存在の貴方と重ね合わせて見上げていたけれども
今は空気を透き通らせながら其処に在る

貴方に手は届かないけれども
ほんの少しその温かさを感じて笑みが零れる
もう声が届かなくても良いと
そう自分に言い聞かせてはいたけれど
嬉しさを堪えることができない


マダ 希望ヲ 持ッテ 良イデスカ?

貴方トノ 間ニハ 縁ガ アルト

友達トイウ 立場デイテモ イイ?


カレンダーに印をつけてその日を待ち望む
新しい関係の始まりの日を
もう一度正面に立ってわたしは笑うのだ

長い並木を自転車で下る
吹き抜けていく冷たい風が手をかじかませ
通り過ぎる車の音は耳を塞いでいく

並木の枝々、葉が空を閉ざし
その暗がりに慣れた瞳は更なる暗闇を探していく

瞳孔は開き、神経は研ぎ済ませれる

まぶしい光を感じ見上げれば
まあるい白い光が煌々と浮かんでいる

月だと思い目を逸らし
空の見えない場所だと思い出す

枝々は夜の帳
道照らす街灯は浮かぶ月
ありえない
そう否定する事はできても事象は変わらない


あの時に
そう後悔してもやり直す事はできない


溜まる不安は口から漏れず
ただ節々に発現されていくのみ


どうしたらいい
そんなこと判っているだろうに

助けて
そんなこと言える筈が無い


皮膚は繋がりを捨て内なるものを外に開き
唇は赤く腫れて血通うことを訴える

それらの楔を打ち付けられて
縛り上げられていくのをどう止めたらいい
孵化するように少しづつ世界は広がる
知らなかった事を吸収してまた新しい大地が広がる

でもふとした瞬間に扉をくぐっているの
いつもの風景変わらない雰囲気
それなのに何故か懐かしい想いを感じて

想いを手繰り寄せて
色褪せた思い出を手繰るうちその手は壁があることを知る

硝子よりも脆く
空気よりも存在が薄い壁

その先には何がある?
過去の風化した思い出?
それとも未来をかいまみるのかしら

いいえ、扉をくぐったならそこは世界の限界
その先に自分が存在する場所など存在しない

その壁は誰かの限界に繋がっていて
そこはいくつもの色が交じり合う全ての狭間
始まりも終わりも用意されていない

壁越しに貴方の姿を見かけたの
見間違えだとは思えない
その姿を間違えるはずなど無い

いつのまにか私と貴方の立つ世界は
限界の
不可侵の
――その壁に阻まれて

空が通じていようとも
もはや別の交わらない大地に生きている

語りかける事も会う事もできるけど
心が求めていても もう別の世界の人なのだ
水無月の降りしきる青い雨よりも
この銀糸の雨が心和ませる

冷えた季節の空気にそれは浸透して世界を覆う

日の入らない暗がりの部屋からサッシ越しに見る風景は
みなしっとりと色映えていて
まるで絵画を眺めるようだ

無音でないはずなのに
耳に届く音は何一つ無く
心音と共に雨音が身体に響く
時さえいつもとは違う流れ方をして
たった一人此処に居る錯覚さえも引き起こす

それはいつだって変わらない魔法
変わることが無いもの

人が、人のココロを失うまで
世界で繰り返される常盤
抜けるような青空に浮かんだ月は半透明

まるで透けた骨のようなそれは
不思議と不気味さを感じさせない

じょうろで水をかけてやれば
スポンジのように膨らんで内に閉じ込めるのだ

真っ赤に燃える夕日に枯ている真昼の月はどこまでも貪欲で
いつか地球の蒼を吸い込んでしまおうと狙っている

まだ地球に海あるうちは
決して月は本当の意味で満ちる事は無い
飢えたその身を太陽に照らし
毎日自分を追い詰めている

月が太陽を追って空を巡るのは
それでも太陽をいとおしいと思っているから

どんなに自分を苦しめる元凶だと判っていても
忘れられない想いに縛られている

愚かで悩ましい 真昼の月