むかし、むかしのお話
織姫はいつものように機を織っていました。
いつもは無心に織っているのですがその日は違っていました。
天の川の対岸で見かけた牛飼いの事を思っていたのです。
物心ついてから機織ばかりしていた織姫は親しい男友達はいませんでした。
天帝の娘だった事も影響していたのかもしれません。
そんな織姫が偶然見かけた牛飼いは遠めに見ても爽やかな人だったのです。
毎日、毎日牛飼いの事を想うあまり織姫は体調を崩してしまいました。
機を織る事も出来ず、床に臥せってしまったのです。
心配した天帝は様子を見に来ましたが織姫は会いませんでした。
見知らぬ牛飼いを想っているとは言えなかったのです。
従者にさりげなく牛飼いの事を聞いた天帝はその牛飼いの元へ行きました。
「牛飼い、その方の名は何と申す?」
「はい、牽牛と申します」
「うむ、牽牛か・・・そなたはわしの娘を知っておろう?」
「いや存じませぬが?」
そうか・・・織姫の片思いなのか・・・
天帝は娘のために牽牛を連れて行くことにしました。
「牽牛よ、わしと共にわしの屋敷に来てくれ」
「はい」
天帝の言う事に逆らう訳にはいきません。
牽牛は大人しく天帝の屋敷まで来ました。
「牽牛よ、実はわしの娘、織姫は病で床に臥せっておる、見舞ってくれぬか?」
「分かりました、わたしでよければ」
牽牛は織姫の寝所に案内されました。
「織姫、今日は見舞いの者を連れて来たぞ」
「わたしは誰とも・・・」
織姫は天帝の後ろにいる牽牛を見て言葉を失いました。
何故あの人がここに?
織姫はうろたえました。
一方牽牛の方も織姫を見て驚きました。
あの娘さんだ。
実は牽牛も織姫にひと目ぼれしていたのです。
その様子を見て天帝は二人を結婚させる事にしました。
二人は喜び一緒に暮らし始めました。
すっかり元気になった織姫は前よりいっそう機織に精を出しました。
牽牛も牛を増やし一生懸命働きました。
ある時いつものように牛を追っていると傷ついた鳥が道端でうずくまっていました。
牽牛はそのカササギを連れて帰り傷の治療をしてあげました。
何もかも順調にな時に牽牛の身体に異変が起きました。
食欲が落ち、疲れやすくなり、日増しに痩せていきました。
もちろん牛飼いの仕事など出来ません。
織姫は機を織る間も惜しみ看病しました。
牛飼いの仕事もせず、機を織る事もしなくなった二人の元へ天帝がやって来ました。
「お前達、一体どうしたと言うのだ」
「実は・・・」
織姫は今までの経緯を話しました。
「そうか・・・お前達は少し離れて暮らした方がいいのかも知れんな」
「何を言って・・・」
天帝は二人の言葉に耳を貸しません。
牽牛は無理やり天の川の西側に連れて行かれました。
織姫は毎日泣いて暮らしました。
天帝はそれを見て胸を痛めましたが一度決めた事はそう簡単には変えれません。
悩んだ挙句一年のうち一日だけ会う事を許しました。
その会う日7月7日に織姫は天の川のほとりにいました。
しかし天の川の対岸に牽牛の姿はありません。
心配になった織姫は何とか向こう岸に渡ろうとしますがすべて失敗に終わります。
途方にくれていると、どこからともなくカササギの群れが現れ羽を広げ橋を作ってくれました。
その中の一羽に見覚えのある傷がありました。
織姫はカササギに感謝して天の川を渡り牽牛の元へ走りました。
牽牛は更にやせ細っていましたが織姫を見て笑顔を見せました。
二人は楽しいひと時を過ごしましたが、いつまでも一緒にはいられません。
後ろ髪を引かれる思いで織姫は再びカササギの橋を渡り戻って行きました。
毎年7月7日が近づくと織姫は牽牛を心配し涙を流しました。
もしかしたらもう永遠に会えないかも知れないと・・・
その涙は地上に雨としてt降り注ぎました。
今年も無事に織姫と牽牛は会えたのでしょうか・・・
終わり