孝一はいつものように川辺でトランペットの練習をしていた。
武器として使っている為か、くぐもった音しか出ない。
孝一は吹くのを諦めて座り込んだ。
「これじゃあ、下手くそみたいだな・・・」
誰とは無しにつぶやく孝一であった。
帰ろうと立ち上がった時、携帯が鳴った。
嫌な予感がする。
だいたいこんな時は嫌な電話に決まってる。
「もしもし・・・何?グロッテスコが暴れてる?」
孝一は状況が分かるように相手の言葉を口にした。
「それで、どこで?何?秋葉原?」
孝一は状況が分かるように相手の言葉を・・・以下同文。
「なんで秋葉原に現れたんだ・・・何?AKB48?」
孝一は状況が分かるように相手の・・・以下同文。
「分かった、すぐ行く」
孝一は携帯をしまうと近くに路駐していた車に乗り込んだ。
駐車禁止のステッカーが貼られていた。
またか・・・長官に言って何とかしてもらおう。
国家権力をいけない方向で利用する孝一だった。
孝一の乗った10年落ちのカローラは秋葉原に向かった。
秋葉原ラジオ会館の前には野次馬が何十人といた。
異様な雰囲気で口々に何か言っている。
中にはカメラを構えている奴もいた。
側に見慣れた車が止まっている。
クラリネット型のバイクとピアノ型のトラック、フルートとチェロを
くっつけたようなサイドカー・・・
孝一は頭を抱えた。
何てセンスだ。
孝一が野次馬をかき分けて前に出るとグロッテスコが光を
捕まえているところだった。
桃子は必死に光を助けようとしているが、健治と五郎は黙って見てる。
黙って見てはいるが目つきが異様だ。
何かあったな。
孝一は健治のそばに行き、小声で聞いてみた。
「どうした、何かあったのか?」
「うん、それがさ・・・光の奴、見せパン穿き忘れたらしいんだ」
「何だと!」
孝一の頭はぐるりと回って光を見た。
随分器用だ、よい子のみんなは真似しちゃ駄目だぞ。
野次馬の異様な雰囲気に納得がいった。
孝一も静観を決め込んだ。
孝一に気がついた桃子が叫んだ。
「リーダー!変身しましょう」
「こんな所でか!」
孝一も負けずに怒鳴り返す。
「このままじゃ光が危ない!」
「俺には危ないように見えない!」
桃子の顔色が変わった。
「何だと!お前の目は節穴か」
「節穴だ!」
開き直る孝一だった。
桃子は怒りのあまり口をパクパクさせている。
その時グロッテスコに摑まっていた光が叫んだ。
「変身!」
光の身体は光に包まれた。
「あっ、馬鹿」
孝一は慌てた。
こんな近くで変身したら全員変身してしまう。
この変身システム何とかしてくれないと駄目だな。
孝一達の気持ちと裏腹に4人とも変身してしまった。
こうなったら仕方が無い孝一は腹をくくった。
「トランペット・レッド」
「クラリネット・ブルー」
「フルート・イエロー」
「チェロ・ピンク」
「ピアノ・ブラック」
『五人揃って、ゴセンフジャー』
相変わらずセンスの無いネーミングの戦隊に変身したところで・・・
つづく